お祭り船「べっぴん丸」で日本の港町を活性化!?[小山薫堂の妄想浪費 Vol.14]

老舗商店のポップアップショップが立ち並ぶ、神社の仲見世のような「べっぴん丸」がいよいよ就航!? (illustration by Yusuke Saito)


その昔、神戸・長崎・横浜が日本と世界をつなぐ港として、さまざまな人と物と文化を行き交いさせ、独特な街並みをつくりあげた。今後、水上飛行機がたくさん就航するようになれば、日本の港町はあらためて価値を持つのではないだろうか。実はこのうちの神戸がまさにいま熱い注目を浴びている。きっかけは、神戸にあるファミリアという子ども服の女性創業者をモデルに描く、今秋スタートの朝ドラ「べっぴんさん」。神戸の人たちはこれを機に「神戸別品博覧会」を企画しているのだという。

「べっぴん」は「別嬪」、つまり容姿の美しい女性を指すが、そもそもは「普通の品物とは違う特別な品」という意味で使われていた「別品」が語源。そこでファミリアの社長が音頭を取り、神戸の老舗ブランドなどがスペシャルな品(別品)をつくって博覧会をするという試みらしい。

それなら、各港の活性化を願って、日本中を就航する「べっぴん丸」を造船するというアイデアはどうだろう。先の常石造船はコンテナ船もつくっているから、その中古のコンテナを船に積み込んで、大型船のポップアップショップをつくるのだ。イメージ的には、個性あふれる料理やお酒を提供するフードカードやカフェなどをオープンスペースに並べた、東京・表参道のCOMMUNE246(旧246COMMON)。つまり、大型船べっぴん上に、神戸の老舗による商店街があるイメージとでもいおうか。

べっぴん丸は1シーズンで日本を1周する。インターネットが発達して、日本全国四季折々の品物が注文翌日には配送される時代にあるからこそ、土地の人とのリアルな触れ合いやはるばる時間をかけて運ばれてきた品物が重宝されるような気がする。子どものころに町にサーカスがやってくるのを楽しみにしていたように、僕たちは港に立ち並んでべっぴん丸の入港を待つ。

そう、それは本当にサーカスに匹敵するような、動く屋台、動く仲見世、動くお祭りみたいなものであってほしい。なんなら船の上に神社も設置しよう。夏は水難事故を防ぐために波左間海中公園にある海中神社(洲崎神社の分社)とか、冬なら受験シーズンなので太宰府天満宮とか、四季ごとに招聘する神社を変えていくのだ。

たぶん造船に200億円くらいかかるかもしれないけれど(苦笑)、常石造船さんであれば意外と企画に乗ってくれるような気がします。なんといってもVIP専用の迎賓館を一般のお客様が来られるリゾートホテルに改装したという、けっこうな遊び心を持ち合わせ、水上飛行機就航の難関を乗り越えた会社でもあるので、「日本初の神社と仲見世を乗せた大型船就航」も夢ではないかもしれないですよね。
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イラストレーション=サイトウユウスケ

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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