今月は2つの質問を通じて、経済について考えていただこうと考えている。
ーあなたはコンビニで150円のペットボトルのお茶を買った。その150円は、レジに収まったあと、どこへ行くのか?
1. コンビニの店員
2. 飲料メーカー
3. ペットボトルのパッケージデザイナー
4. 配送するドライバー
私は明治大学で、起業や起業家精神について学ぶ「ベンチャーファイナンス論」の授業を受け持っている。学生たちに同じ問題を質問したところ、上記の選択肢のように、さまざまな答えが返ってきた。
学生A「コンビニの売り上げになるので、店員の給料になる」
学生B「サントリーやアサヒなど、お茶をつくったメーカーの売り上げになる」
学生C「ペットボトルのパッケージデザイナーにも支払われるはず」
学生D「それだったら、コンビニに商品を運ぶ運送業者の利益にもなるのでは?」
じつは、どれも正解なのだ。この問題の正解は一つではなく、ほとんど無限にある。あなたは、どのような人、あるいは会社をイメージされただろうか?
あなたが支払ったペットボトルの代金はまず、コンビニ店舗の売り上げとなる。すると、お店で働いている人の給料にも反映される。仕入れ元のメーカーの売り上げにもなるが、茶を栽培する農家の利益にもつながっている。容器の原材料は石油なので、石油会社の売り上げにもなる。製品として売り出す際には、パッケージのデザイナーやラベルの印刷業者も必要だ。ペットボトルは、メーカーからお店に輸送するので、輸送業者のドライバーの給料にもかかわってくる。
こうして挙げると、キリがない。あなたがコンビニのレジで特に意識することなく払った「150円」というお金は、これだけの人たちに分配されているのだ。
無数の人々の仕事がつながり、その間でお金が循環しているー。それこそが、「経済」の構造なのである。
このような話は当たり前すぎて、日常の生活ではなかなか意識されない。しかし、経済とはこうしたカネ・モノ・サービスの循環を考えることである。「1本のペットボトルも多くの人たちのバトンリレーの結果、そこにある」と、意識の片隅に置けば、コンビニでペットボトルのお茶を買うときにも、自然と店員に「ありがとう」という言葉が出てくるはず。感謝の言葉は、店員だけではなく、バトンリレーで携わってきた多くの人たちの労働に感謝することでもある。
ビジネスパーソンや投資家として成功している方には、コンビニや居酒屋でモノを買うときに「ありがとう」という気持ちを伝えられる人が多い。そして、フォーブスの読者諸賢にこそ、感謝の言葉を伝えている人が多いと確信している。