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2016.09.08

日本の低成長率の原因は、少子高齢化ではなく「仕事嫌い」?

ハローワークを訪れた求職者


続いての質問だ。

ーあなたは「仕事」「会社」が好きですか?

1. 好き
2. 嫌い
3. どちらともいえない

さて、あなたはどう答えただろうか?

自信を持って「好き」と答えたのならば、あなたはラッキーだ。というのも、残念ながら日本人の多くが「働くことが嫌い」で、「会社のことも嫌い」だから。

まずは、「仕事嫌い」についてデータから見てみよう。就労中の18〜29歳の若者に、働く意義について尋ねたところ、「働くのは当たり前だと思う」と答えた人が全体の4割に過ぎず、「できれば働きたくない」と答えた人が全体の3割もいた(2015年 電通総研「若者×働く」調査。就労している18〜29歳の若者の回答より)。

私が担当する講義でも「働く」ことのイメージについて尋ねたことがあるが、やはり多くの学生が「働くこと=ストレスと時間をお金に換えること」だと捉えていた。会社というタテ組織に自分を放り込み、上司から与えられたタスクをこなし、自由を奪われる代償として給料をもらうのが仕事、と考えている人が多い。

働くことが不幸なら、「会社嫌い」になるのも当然だ。「愛社精神」を尋ねた調査では、「組織貢献・愛着度」という項目で、日本は28カ国のうち最下位の31%だった(ちなみにアメリカは59%、ドイツは47%である。2012年 KeneXaHigh Performance Institute「従業員エンゲージメント調査」より)。

この質問であなたも仕事、会社が「嫌い」と答えたのなら、どうしてそう感じているのか、振り返ってみてほしい。会社を「人生の墓場」だと感じ、墓に片足を突っ込んだまま過ごすのは、あまりにももったいない生き方だからだ。

私は投資家として、生き生きと働く人々や会社も多く見てきた。当然のことながら、会社が好きな社員がたくさんいる会社とそうでない会社と、どちらに投資価値があるだろう。イヤイヤ働く社員が多い会社が成長するだろうか?

日本の成長率が低いのは必ずしも少子高齢化が原因ではない。働くことが嫌いな人たちが会社に多くいるからである。ならば、会社を成長させるために必要なことは、働くことをより社員にとって楽しく、充足感を味わえる場にできるようにすることではないだろうか。

藤野英人 ふじの・ひでと◎レオス・キャピタルワークス代表取締役社長。東証アカデミーフェローを務める傍ら、明治大学のベンチャーファイナンス論講師として教壇に立つ。『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(講談社刊)など著書多数。

文=藤野英人

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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