研究に7年、論文準備に3年を費やしたチームは、ゴキブリの体内で結晶化されたミルクのタンパク質が、多くの栄養を含んでいることを発見した。含有エネルギーは牛乳のほぼ4倍、水牛の乳の3倍だったという。
研究チームはインド紙タイムズ・オブ・インディアに対し、このタンパク質の結晶は「完全食品」であり、「多くの必須アミノ酸や、特定の脂質や糖質といった、細胞の発達といった重要な活動に必要なエネルギーを蓄える物質」を含んでいると語っている。
この研究に気分を害しながらも興味を引かれた人は多かった。個人的には、研究チームがなぜ他の昆虫やクモなどの比較的ましな対象を選ばなかったのかが気になるところだ。
その理由は、40年以上前にさかのぼる。当時、昆虫の繁殖と進化を研究していた科学者で米大学教授のバーバラ・ステイは、ゴキブリの中でも特に体の大きい種類がいることに着目した。
彼女の研究を引き継いだ研究チームは2006年、進化に関するさまざまな研究を開始。当初の研究目的には、成長速度の違いや、タンパク質の結晶が生み出される仕組みの解明などが含まれていたが、ゴキブリのミルクを食用化できる可能性に気付いたのは2013年になってからだったという。
読者の皆さんの中には、ゴキブリの「乳しぼり」に興味がある人がいるかもしれないので、念のためその方法を紹介しておこう。
一番大事なのは、ゴキブリの種類。主に太平洋地域に生息し、卵でなく幼虫を産む珍しい種であるディプロプテラ・プンクタータ(Diploptera punctata)を使う必要がある。ミルクはもちろん雌しか生み出さず、妊娠期間の40~45%が経過した生後54日ほどの個体が最適だという。