アップルのティム・クックCEOは、iPhone 7の評価が芳しくなかった場合に備えて早くから手を打ってきた。アップルの幹部らをこれまで以上にメディアに露出し、製品づくりの裏側での革新的な取組みをしきりにアピールしているのだ。
9月7日の発表においては、そうした舞台裏のストーリーに加えてSiriの改良点や、アップルストアにおける新たな取り組みなどがビデオを交えて紹介されることだろう。しかし、肝心のiPhone 7は、イヤホンジャックがなくなることと新色のブルーが追加されること以外は目新しい変化はなく、デザインやスクリーンサイズはiPhone 6と同じでOSもiOS 10のままだ。
人々はアップルが常にユーザーの願望に応える革新的なハードウェアを生み続けてくれることを期待しており、いくら裏側の取組みをアピールしても世間は満足しないだろう。その意味で、VRヘッドセットの特許取得に関するニュースは、アップルにとって追い風になるはずだ。
「ディスプレイ付きポータブル電子デバイスを取り付けるヘッドマウントディスプレイ」という名称のこの特許は、米特許商標庁に出願された資料を見る限りでは決してスタイリッシュなデザインとは言えないが、iPhoneをドッキングするためのスペースや、映像を見るためのレンズ、内蔵イヤホンなどがあることがわかる。しかし、VR専門メディア「UploadVR」のライター、ジョー・ダービンは、特許を取得したからといって必ず商品化されるわけではないと指摘する。
アップルの革新性を大きくアピール
「今回の特許取得は、当初考えられていたほど大きな意味を持たないかもしれない。アップルのような企業は巨大なR&D部門を抱え、新しい発想やプロトタイプを次から次へと生み出して製品化が追いついていない。たとえすぐに実用化できないとしても、彼らは他社に知的財産を奪われないように特許を取得することが多い」
今回のニュースが重要なのは、これによってアップルがiPhoneに対応したVRシステムの開発に積極的に乗り出していることが明らかになったことだ。ダービンは記事の中で「アップルは革新的な発想を生み出し、世の中を変えることができる企業だ」と称賛している。VRは最新テクノロジーの中でも最もセクシーと言える分野であり、その注目度は増すばかりだ。
アップルによるVRヘッドセットの開発がどれだけ進捗しているかは不明だが、iPhone 7によってイノベーティブな企業としての評価が失墜しかねない中で、今回のニュースは同社のイメージアップに大きく貢献するだろう。