だが、米国政策財団(NFAP)が先ごろ発表した調査結果によると、米南西部の国境で不法入国により逮捕されるメキシコ人の数は、実際には2005年から2015年までの間に82%減少している。2016年中の逮捕者数も、この間とほぼ同じ水準だ。
米南西部国境での逮捕者はこれまで、米国全体での不法入国者数を計る指標とされてきた。そして、メキシコ人の不法移民の数は、過去およそ40年間で最も低い水準にある。
不法入国によるメキシコ人逮捕者数(南西部国境)
出典:米税関・国境警備局
不法入国者の数に影響を及ぼすのは、法の執行と市場環境、人口動態、(外国人の合法的な)入国だ。ここ10年ほどの間にメキシコ人の不法移民が減少したことには、これらのうち2つの要因が深く関わっている。
まず一つ目は、2007年から始まった米国の「大不況」とそれに先立つ景気の減速。二つ目は、人口動態の変化だ。プリンストン大学のダグラス・マーシー教授(社会・公共政策学)によると、「実際のところ、メキシコからの密入国者は1999年から減少し始めていた。国境での取り締まりを強化したからではなく、メキシコの人口転換のためだ」。
また、「1960年代におよそ7だったメキシコの合計特殊出生率はその後、急速に低下。最近では2.25にまで減少している」という。教授はさらに、「移住を検討するのは若者だということを考えれば、出生率は重要な点だ」と指摘する。「13歳以上になると、移住を考える割合が急速に高まる。移民に最も多い年齢は20歳前後で、その数は30歳までに低水準となる」という。