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2016.09.18

偶然が予想外の価値を生む、「セレンディピティレガシー」の魅力

イラストレーション=尾黒ケンジ

レガシーは完成した時点で終わりではない。そのレガシーの影響で違うことが生まれたり、誰かがアイデアを乗っけることで、まったく予想もしなかった新しい価値が誕生していることがある。

それこそが本当のレガシーなのでは!?


4年に1回のスポーツの祭典に織り込まなくてはならないもの。はたまた退任前の大統領が残したがったりするもの。「レガシー」。最近よく聞くこの言葉、あなたは好きですか?私は正直微妙なところです。

後世に意味のあることを残そう、というのはもちろん良いのだけれど、考えたのが誰でどんな意図かが問題なわけで。「誰かの意図」で「僕らの意図」ではない。そこが違和感の元だとわかっています。とはいえ全員の意図は汲み取れない。なにか、いい方法がないか……? 21世紀のブラブラ社員である僕は、国内外いろんな所に足を運びますが、昨年とある場所に行ったときに、いいコンセプトを閃きました。いろんな人が参加して、後付けで、良いレガシーをつくる方法です。

ある日、わがチームのスーパーリサーチャー・牛久保暖が、カナダにアウトドア関連スタートアップが集結する小さな町がある、という情報を持ってきました。その町の名は、スコーミッシュ。人口は2万人。面白そうな変化は行って確かめなくてはいけません。

バンクーバーからクルマで北へ75キロ、ハイウェイで湾の奥地を目指し走ること1時間。巨大な岩山が見えてきたら、そこがアウトドアの聖地スコーミッシュです。中心部にはおしゃれカフェがあるものの、同行した後輩曰く「一歩間違えば廃れる町ですよね」。確かに……。

不安になりつつ、まずは7meshという会社へ飛び込み訪問。マーケティングディレクターのBrianが快く迎えてくれました(実は彼、アウトドアブランドArc’teryxの創業者の1人)。「私たちは自転車のウェアに特化したブランドで社員は7人。ここでプロトタイプをつくり、裏山で即テスト。またフィードバックし、完成形をつくり、中国に発注、生産、世界中に発送しています」とのこと。話の途中で本当に、社員が山からマウンテンバイクで帰ってきました。

印象に残ったのは「Mother natureのおかげ。Mother natureを活かしているだけだ」という発言。そう、ここはクライミング、バイク、釣り、トレッキングなどなどアウトドアスポーツが何でもできてしまう環境なのです。

また、アウトドアスタートアップ集結情報は確かで、ここの隣はパタゴニア、その隣もウェアの会社、その隣はギアの会社。それらは「Rec-tech」(Recはレクリエーション)と呼ばれているそう。誰か紹介してと頼むと「じゃあ、市長を」とすぐメールしてくれました。
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文=倉成英俊

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