社員貢献から社会貢献へ、ロート製薬の「一風変わった」取り組みとは

山田邦雄 ロート製薬株式会社代表取締役会長兼CEO(写真=佐藤裕信)


「最初は、社員の健康を考えて提供していた薬膳料理が、次にご近所さん、そして世間の方々へと徐々に広がっていったわけです」

社員貢献のために始まった”ロート・ユートピア”が社会貢献するユートピアへと進化したのだ。

山田は今”薬に頼らなくても健康でいられる社会”を目指して、次なる転換を図ろうとしている。

「本当の健康は薬が必要でなくなることだと思うんです。まずは、普通の食生活を送る中で、病気にならないよう、健康を維持していくのが一番ですから」

注目しているのは食べ物に含まれている自然のエキスだ。食べ物にはまだ知られていない働きがたくさんあり、中には、長寿の秘密が潜んでいるものもある。そういった食品の新たな可能性を発見したいという。

「何気なく口にしている食べ物の中に実は“宝”が潜んでいるんです。その意味では食品は宝の山。そんな宝を発見し、食品や化粧品に取り入れることで、健康や美という、人の機能を維持させる。それでも病気になったら、本業の医療の出番です」

医療の中でも、力を注いでいるのが再生医療だ。毎秋、サンフランシスコで行われる再生医療のシンポジウムには、最先端で研究を行う学者たちと語り合う山田の姿がある。ロート製薬初の再生医療製品は肝硬変などをターゲットとし、1~2年以内に臨床試験に入り、2020年に製品の上市を目指す。

「まずは、食で病気にさせない。しかし、病気になったら最先端医療で治す。ロート・ユートピアで予防から治療まで貢献するのです」

言いながら、山田は、机を並べている社員たちを鼓舞するのだった。

やまだ・くにお◎1956年大阪府生まれ。79年、東京大学理学部物理学科卒業後、80年ロート製薬入社。91年に取締役就任、96年代表取締役副社長、99年代表取締役社長を経て、2009年より現職。慶應ビジネススクールMBA(経営学修士)取得。

飯塚真紀子=文

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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