人と人とのつながりがビジネスを生む、「共感経済」という考え方

公益社団法人 日本青年会議所第65代会頭 山本樹育 (吉澤健太 = 写真)


さらに山本は、2011年にJCの日本経済成長戦略委員長を務めることになり、ここでBOPビジネスに着目する。BOPとはBase of the Pyramid(ベース・オブ・ザ・ピラミッド)の略で最も所得が低い層を示す。世界金融公社などが07年に年間所得が3,000ドル未満の層をBOPと定義しており、現在では約40億人がこの層にいるという。

しかし、スラム街などに住む多くの人々は、実際には携帯電話を使い家電製品を持っているというのだ。一口にBOP層といっても、その上部層は年収が37万〜146万円もあるという。

グローバル企業のほとんどが富裕層をターゲットにしてきたが、この流れが大きく変わろうとしている。BOP層は、いままでは支援の必要な層とされていたが、ある程度の消費活動が見込めることから、アメリカやヨーロッパの企業の多くがBOPビジネスに参入している。日本企業はやや出遅れ気味だが、ヤクルト、住友化学、味の素、花王、ヤマハ発動機、パナソニックなどが進出している。

「海外14カ国で訪問販売員を置いている『ヤクルトレディ』の視察にインドネシアまで行きました。幼子がいても、ヤクルトレディならば子どもを連れてでもヤクルトを届けることができるし、何よりも安定した雇用を与えることが一番の経済支援にもつながります。味の素は、瓶では買えない層に向けて小袋に分けて販売をしていますが、これもBOPビジネスの一つです。このような小袋販売は途上国ではメインであり、ユニリーバやP&Gによる洗剤事業が先駆者です。

日本が誇れるBOPビジネスとして挙げられるのは、住友化学がアフリカで展開しているマラリアの撲滅を目指すための、薬剤入りの蚊帳の販売です。この商品は、日本人ならではの細かな視点から生まれた発想だと感心しまた。

また、日本ポリグルの事業も素晴らしい。汚れた水に納豆菌を入れるだけで汚れが吸着し、ろ過するだけで水が飲めるようになるという水の浄化剤を開発・販売しています。通常は企業利益のためだけの販売を目的としがちですが、同社は発展途上国の現実を知り、安価で安心して水が飲めるように役立ちたいと、BOPビジネスを展開しています。

社会貢献はいままでのようにただ与えるだけではなくて、上手くビジネスを絡ませることで売り手も買い手もウィンウィンの関係ができます。好循環で回る経済の仕組みができれば、ずっとそれが勝手に循環していく。誰も損することなく、自然に世の中が変わっていくのです。そのためにも、成功事例となるビジネスモデルを作っていこうとJCで取り組むことになりました」
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椎名 玲 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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