ビジネス

2016.09.10

ポルシェ ジャパンが「日本企業として」描く未来

ポルシェ ジャパン 代表取締役社長 七五三木敏幸 (岩沢蘭 = 写真)


「環境活動へのサポートの一環として、クラシック・ポルシェを楽しむ人々へのサポートも充実させる方針です。いいものを長く使うという意味もありますが、なによりも、これまでにポルシェが歩んできた歴史を否定せずに、大切に乗ってくださる顧客の方が部品などに困らないように万全の供給体制を敷きます。実際、1931年の創業からこれまでに生産されたポルシェのうち、70%が今でも生き残っているという事実があるのです。最新のポルシェを好んでくださる方々と同じように、ポルシェの歴史を育んできてくださった顧客の方にも敬意を払って対応します」

実のところ、「最新のポルシェは、最良のポルシェ」という有名なフレーズが示す通り、ポルシェ ジャパンとしても、最新の速いスポーツカーを日本の顧客にいち早く提供することに重きが置かれた時代があったのも否めない。一方で、「カイエン」や「マカン」のようなSUV、「パナメーラ」のような4ドア・サルーンとラインナップの幅を広げてきた。その段階ですら、“SUVや4ドアなんてスポーツカーじゃない!”という批判が囁かれた。

さらに今後、PHVの販売を伸ばしたり、EVまでも手掛けるとなると、旧来のファンからは再び、“そんなのスポーツカーじゃない!”という嘆きが聞こえてきそうだ。

「クラシック・ポルシェを愛する皆様がポルシェを乗れる状態で保有してくださっていることに対して、責任ある対応をするのは企業として当然のことです。日本では古くから最良のスポーツカーとしてポルシェを選択された顧客の方が多く、大変感謝しています。その一方で、SUVや4ドア・セダンからポルシェの世界に入ってくださる方も年々増えています。クラシック部門に力を入れることは、水平対向エンジンや911に代表されるスポーツカーといったポルシェの伝統を重んじてくださる顧客の方とのリレーションシップの意味合いもあります」

そして、第3のミッションが、スポーツドライビングの提供だ。これまでにもドライバーズ・トレーニングを実施するなど、スポーツ・ドライビングの体験を広めることに加え、「911」の中でも最高峰の「911 GT3 Cup」によるワンメイク・レースであるカレラカップ・ジャパンや、世界14カ国で開催されるポルシェ公認モータースポーツシリーズであり「GT3 Cup Challenge」へのサポートも継続的に行っていく。

しかしながら、誰もが知るスポーツカー・メーカーであるポルシェが、なぜ、いまあらためてこのような所信表明をする必要があるのだろか?
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川端由美 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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