ビジネス

2016.09.10

ポルシェ ジャパンが「日本企業として」描く未来

ポルシェ ジャパン 代表取締役社長 七五三木敏幸 (岩沢蘭 = 写真)


「今回、キーノートを開催した主眼は、ポルシェジャパンが描く将来をお伝えすることです。創設20周年を機に、社内でも議論を重ねてミッションを構築しました。最も重要なのは、たとえ動力がガソリンから電気に変わっていくとしても、我々が皆さんにスポーツカーをお届けするという役割は変わらないということです。顧客に何を提供するか? を具体的に言葉で示すべきだと考えたとき『お客様の期待を超えた「歓び」を提供する』ことが重要だという結論に至りました」

ポルシェジャパンとしては、そのために3つの約束を掲げている。ひとつは、日本経済、日本社会への貢献である。非常に単純だが、ポルシェという魅力的な商品を提供することで、日本の消費を刺激するという言葉通り、ポルシェ ジャパンの設立から当社の成長は続いており、20年間で約3倍まで日本市場における売上を伸ばしている。

2つ目は、環境保護のサポートだ。ポルシェはすでに日本でも、「カイエン」と「パナメーラ」でプラグイン・ハイブリッド(PHV)を販売している。実際、SUVや大型セダンのような大きなクルマでこそ、PHVのような低燃費化の技術は本領を発揮する。

今後は、ポルシェジャパンの販売台数のうち、約10%をPHVとする方針を打ち出した。また将来にわたる環境保全への具体策として、昨年のフランクフルト・ショーで発表した電気自動車の『ミッションE』のプロジェクトも推進しており、日本でも導入を計画しているという。

「ミッションE」とは、4人乗りのEVセダンで、2020年までの発売を予定しているモデルのことだ。アルミやカーボン複合材などの最新素材を駆使し、非常に軽量なボディが与えられている。さらに、先日のル・マン24時間耐久レースにて勝利を手中に収めた「919ハイブリッド」に積まれている強力な電気モーターとほぼ同じものを2基も搭載するのだから、スポーティでないはずがない。

そう、七五三木氏が最初に言葉にした通り、たとえ、パワートレインが電動化する時代になっても、スポーツカーを提供するというポルシェの基本理念に変化はないのだ。ただ、ひとつ気になるのが、旧来からのポルシェ・ファン、特に「911」を頂点としたスポーツカーをこよなく愛する顧客が、ポルシェのこうした変化に対してどう反応するかだろう。
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川端由美 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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