中でもスウェーデン発のデニムブランド「ヌーディ・ジーンズ(Nudie Jeans)」は、サプライチェーン(原材料の調達から生産管理、物流、販売までの全プロセス)の改革と商業的成功の両方を実現している注目株だ。
ヌーディ・ジーンズは2001年、スウェーデン第二の都市、ヨーテボリで誕生。2006年、創業者のマリア・エリクソンは取引のあるサプライヤーを集め、方向転換を宣言した。その当時20%だったオーガニックコットンの使用率を100%に引き上げると表明したのだ。これによりいくつかのサプライヤーが同社から離れたが、エリクソンらはポリシーを貫き、2012年に目標を達成した。
企業が倫理を守りながら利益を出すことは可能かとの問いに、同社のパレ・ステンバーグCEOは自信たっぷりに答える。「もちろん。誰にでもできるはずです」と。
現在の年商は5,000万ユーロ(約55億5,000万円)。従業員数は230人で、そのうちの65人がヨーテボリで働いている。今のヌーディ・ジーンズには1年間で事業規模を2倍に拡大できる資金力があるが、ステンバーグは急成長を望んでいない。「スローで持続可能な成長を目指す」と言う。
インドの有機コットン生産者と提携
実際、ヌーディ・ジーンズは企業の基礎を固めるのに15年を費やしてきた。特に力を注いだのがサプライチェーンの構築だ。同社のウェブサイトでは、インドやトルコのオーガニックコットンの生産者からヨーロッパ各地の紡績工場まで、すべてのサプライヤーが詳しく開示されている。
そのうちのひとつが、インド中南部のハイデラバードに拠点を置く小規模農家の協同組合Chetna Organic。コットンは元来、害虫に弱い作物だ。コットン畑は地球の表面積の3%に満たないにもかかわらず、一説では世界で消費される殺虫剤のうち20%がコットン栽培に使われていると言われる。
遺伝子組み換えされた害虫に強い新種もあるが、種が高価で、しかも一代しか育たない。そのため世界有数のコットン生産国であるインドでは、多くの生産者が殺虫剤による健康被害に苦しみ、また経済的困難に陥ってきた。
Chetna Organicはこのような状況を打破すべく設立された機関で、環境や健康に負荷をかける従来型農法から有機農法への転換サポートや種バンクの運営を行う。約35,000人の生産者が加盟し、欧米のブランドを中心とした20社以上とパートナーシップを結んでいる。