EUの行政執行機関である欧州委員会に宛てた独運輸省の書簡を入手した同国の経済誌、ビルトシャフツボッヘが報じたもので、独フォルクスワーゲン以外では、組織的な不正が政府当局によって示された初の例となる。独運輸省はまた、伊政府がこの件を把握していながら明らかにすることを避けていると指摘。暗に同国の態度を非難した。
この問題は今後、EU加盟各国間の“全面戦争”に発展する可能性がある。そして、(自動車に関するEU規制のうち承認に複雑な手続きが必要な場合は)「加盟国のうち一国が承認を得れば自動的に、域内の他国にも許可が下りる」という現行の制度が崩壊することにもつながりかねない。
「不正」の疑いは今春発覚
独連邦自動車庁(KBA)は今年5月、FCAのフィアット「500X」の排ガス浄化装置に「不正」が見つかったと発表した。だが、その時点で不正の疑いが持たれていたのはフィアットだけではなかった。
そのため、EUや加盟各国の当局は域内の自動車メーカー各社に聴取を行い、不正を行うことがないよう指示。仮に問題があるソフトウェアを使用していれば交換し、方針を改めるよう求めた。フィアットもEUの聴取対象だったが、同社はこれに応じなかった。
フィアットは当時、EUに対して弁護士名で書簡を送付。EU仕様車の承認に責任を負っているのは自国の政府当局だと弁明。その直後、伊運輸省もまたEUに書簡を送り、フィアットの車に不正はないと主張していた。
独KBAがフィアット「500X」と「ドブロ(Doblo)」、ジープ「レネゲード」について行った調査の結果では、いずれのモデルにも不正な装置が見つかった。
独デア・シュピーゲル誌がKBAの話として報じたところによると、一部の車はエンジンをかけてから22分後に排ガス再循環装置のスイッチが切れ、NOx(窒素酸化物)触媒が機能しなくなったという。EUの排ガス規制に関する検査では、エンジンを20分間かけた場合の数値を測定することになっている。
伊当局はこれを「エンジンを保護するための機能」と説明したが、独当局はEU宛ての書簡の中で、「この見解には同意しない」と明言している。
FCAはこの問題について、ビルトシャフツボッヘ誌に決まり文句を並べただけの文書を送付。「自社が手掛ける車は全ての規則に従っている」と述べている。