テクノロジー

2016.09.04 08:00

集中力を高める謎のリストバンド「ドッペル」 150ドルで販売開始

Credit: Doppel

ドッペル(Doppel)という名のスタートアップ企業が、「人を覚醒させ集中力を高める」リストバンド型ガジェットを発明した。ドッペルを着用すると、まるで大量のカフェインを摂取したような気分になる。

ドッペルの外見は一般的な腕時計とさほど変わらないが、内部には手首サイズの大きなディスクが格納されている。筆者はドッペル創業者のジャック・フーバーからこのデバイスを手渡された。端末をタップすると一分あたり170回の速さで回転を始めた。筆者の脈拍は平常時で一分に65回だった。

ドッペルが送り出すリズムは、ジムでワークアウト中の心拍数の高まりを連想させる。筆者は椅子に座り、腕にデバイスつけているだけなのに、なぜだが心臓の鼓動が早くなっているように感じるのだ。「人間の感覚というのは主観的なものなんですよ」とフーパーは話した。

ドッペルを着用してこれまで400名が記憶テストを行なったが、このリストバンドを着用すると誤解答が減ることが確認された。ほかにも朝の目覚めを良くしたり、昼食後の眠気を遠ざけるといった利用法も想定されている。

筆者はドッペルを着けていると、ビートの強いエレクトロミュージックを聞いているような気分になった。意識が覚醒し、集中力が高まっていく感覚を得られる。まさに、カフェインの強いコーヒーを大量に飲んだ時のような気分だ。

ドッペルの共同創業者、Fontini Markopoulouによると「ヘッドフォンを通して心臓の鼓動を聞くと、実際の心拍数に影響を与えたり、特定のイメージを想起させる効果がある」という。「我々の推測では、人間は感じた状態に体を近づけようとするメカニズムを持っています。『心拍数があがっている、これは刺激がやってくるに違いない』といった具合にです」と彼は話す。

今秋、150ドルで販売を開始

開発チームも、ドッペルがどのようなメカニズムで効力を発揮するのか確認できていないが、生物学の「エントレインメント」という現象が当てはまると考えている。二人の人間が歩いていると、いつの間にか歩行リズムがぴたりと合っている現象が例に挙げられる。

ドッペルは昨年、キックスターターで11万ポンド(約1,480万円)の資金調達に成功。英国ロイヤル・アカデミーのエンジニア部門からも5万ポンドを調達している。これまで1千個をキックスターター経由で販売し、北米とヨーロッパで今秋には150ドルで正式発売を予定している。

ウェアラブルデバイス市場は2019年までに、250億ドルの規模に到達するとの予測もある一方、Fitbitやアップルウォッチ、Jawbone Up等の製品の今後には、疑念も高まっている。アメリカ医師会は今年6月、健康トラッキングアプリやウェアラブル端末の検査品質を、「21世紀のガマの油」だとこき下ろすレポートを発表した。

ドッペルも今後の商品展開にあたり、テストを繰り返し、その効用が単なる「150ドルのプラシーボ効果」だけではないことを証明する必要がある。今年後半には米ディズニーの支援を受けたテストトライアルで、ドッペルが子供の睡眠改善やADHDの治療に役立つかの実験も予定している。

ドッペルの創業メンバーらは全員、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートとインペリアルカレッジの卒業生。精神生理学をベースとしたテクノロジーが、精神や肉体にどのような影響をもたらすかを研究するクラスで知り合ったという。

「例えば真っ暗な部屋の中に居て、大きな音を聴き、心臓の鼓動が早くなったとします。怖いと感じたのは、心臓の鼓動が早くなったからなのか、その逆なのか。私の考えではそのどちらも当てはまります。これはフィードバック理論で説明がつく話なのです」とフーバーは話す。

フーバーたち自身も最初はドッペルの効果に懐疑的だったという。「今でも自分たちの事業を奇妙な話だと思います。実験を繰り返した結果、本当の効果が立証できなければ、メンバー全員で事業停止に向けて話し合うつもりでいます。ニセモノを商品化しようとは思わないのです」とフーバーは語った。

編集=上田裕資

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