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2016.09.01

低率課税こそ「公平」? 巨額追徴課税のアップルがEUに反論

Sorbis / Shutterstock.com


米財務省もこの問題については、アイルランドと同様の見解だ。欧州委が(アイルランドの)課税に関して調査を行うことは「不公平だ」と明言している。

だが、EUはこれらに対し、アップルが欧州域内で得た「ほぼ全ての利益」がアイルランドの子会社に集められており、企業活動の拠点としている国に税金を納めるべきとの慣例に従えば、同国での税率が0.005%だというのはばかげた話だと述べている。

「公正な」税率こそが公平か?

アイルランドの国内総生産(GDP)は約2,380億ドル(約24兆5,770億円)。これに対し、アップルの時価総額は5,710億ドル(約58兆9,630億円)だ。

一企業が所在する国のおよそ2倍の経済的規模を持つ状況下で、その国が法人税率を決定する。この場合、立場の強い企業は小さく経済的にも影響を受けやすい国を脅すことができる──そう考えることもできる。

だが、仮にアイルランド政府が国内にあるアップルの「架空の本社」に集められた多額の利益に追徴課税を求めていたとすれば、アイルランド経済は壊滅的な影響を受けていた可能性がある。拠点を自由に移動することができるアップルは、より“従順”な別の国に移転していただろう。一方が大幅に有利になる形でのこうした「偏った」取り決めは、公正な合意になり得るのだろうか?

公正さの基本は、全ての法律が定める条件が満たされていることだ。その法律には、「国による補助」も含まれる。そして、公正さは法の精神を順守するという基礎の上に成り立つものでもある。

アップルに「妥当な」税率に基づく税額を収める義務があることは明らかだ。同社が過去にそれを回避してきたのだとすれば、それは不当な行為だ。欧州委は、その不当な行為を正そうとしているのだろう。

編集=木内涼子

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