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2016.09.05

エンジェル投資家が惚れ込む「バージョンアップ経営者」の魅力

写真=平岩 享


瀧本:武田さんは経営者として貪欲で、学んだ知識をすぐに実践するところが優れています。会社経営のアドバイスをすると、次週には「こうなりました」と報告がある。私の投資基準は、1.いまはなくても10年後には大きな市場があるか、2.競争になりかけても勝って独占できるチームか、3.起業家の粘り強さがあるかーの3つ。武田さんは粘り強さに加え、”教えがい”もある。東京大学名誉教授の岩井克人さんや西垣通さん、松岡正剛さんなどといった多様な分野の大御所の先生方が代わる代わる彼に教えを施しているのも、”教えがい”があるからだと思います。

武田:もともと何も持っていないし、学んだことを実践しないと、会社が潰れてしまうので…。ベンチャー経営は失敗と修正の連続です。本当に苦しいとき、瀧本さんはいつも「起きたことはすべて正しい」という言葉をかけてくれるんです。この言葉に起業家として何度も助けられました。未来につなげていく意志さえあれば、過去の失敗は成功の源になる。

瀧本:伸びる会社の経営には濃密な”人間ドラマ”があります。この会社にも、もちろん”ドラマ”がある。武田さんが面白いのは、経営のステージが変わるたびに、経営のスタイルを変えてきた起業家だということ。投資家として、通常なら別の経営者を連れてくる場面でも、新たに求められる経営者像を理解して、何度も自分を”バージョンアップ”するのを見てきた。いま、第二創業期を迎え、社名も変えて、海外に向けて進もうとしている。さらにバージョンアップする武田さんを見られると思うと楽しみです。

たきもと・てつふみ◎京都大学産官学連携本部寄附研究部門イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授。東京大学法学部卒業後、東京大学大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。独立後は企業再生やエンジェル投資家として活動しながら現職。

たけだ・たかし◎クオン株式会社代表取締役。1974年生まれ。日本大学芸術学部にてメディア美学者・武邑光裕に師事。在学中の96年、クオンの前身となるエイベック研究所を創業。2000年、株式会社化し、16年6月23日、クオンに社名変更した。著書に『ソーシャルメディア進化論』。

文=山本隆太郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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