その理由として考えられるのは、夏休みシーズンに突入し、特に日本の市場参加者が休暇モードから完全に復帰してないことがあっただろう(いわゆる「夏枯れ相場」)。そして、それ以前の6月の段階で英国のEU離脱という、市場にとってはとんでもないサプライズを経験した直後ということも要因だろう。
相場が激しく動いただけにウォーム・アップならぬウォーム・ダウンの時期と重なった、市場が疲れて膠着状態に陥っていた側面は否めない。
一方、講演会などで話をしていると、個人投資(投機?)家の方からはなぜドルは上がらないのかという質問を少なからず頂戴する。去年の今ごろは1ドル125円、それが今や100円台。自分の生活にさほど変化はないのに、いったい為替レートには何が起こっているのか? との疑問を持たれるようだ。
水は高い所から低い所へと流れるが、お金の流れは逆だ。低い金利から高い金利を目指して流れる。今年に入ってマイナス金利まで実施している我が国に対して、米国は利上げ観測を呼んでいるわけであるから、米金利が上昇するのならその分ドル高へと期待する気持ちはわからなくもない。
しかし、為替レートには二国間の金利差の他に二国間の物価上昇率の差も関係してくる。物価が上昇するということは(同じお金で買えるモノが少なくなるため)、その国の通貨価値が下がることを意味し、為替市場では売られやすい。例えば、日米二国間で米国の物価上昇率が日本よりも高くなれば米ドルは売られやすく、その代りに日本円は買われやすくなる。
先日発表となった我が国の7月の消費者物価上昇率は全国総合で前年比-0.4%。今年に入ってマイナスが続いており、デフレ脱却が遠のくとのニュースを目にされた方も多いだろう。
対する米国だが、昨年前半は原油価格の急落で消費者物価(総合)がマイナスに転じ(そのため日米の物価上昇率は一時、日>米と逆転したこともあったが昨年年末には解消)、今年に入ってからは+1%前後で推移している。