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2016.09.04

不眠症のオンライン療法、その効果を疑ってみるべき理由

Monkey Business Images / shutterstock


そこから新たな懸念が浮上する。CBT-Iは、不眠症が否定的思考の結果だという仮定に基づいている。しかし、もしもその否定的思考の原因がうつ病や不安障害(あるいはその両方)ならば、手っ取り早いオンライン治療に頼るのは危険に思える。脳出血をばんそうこうで治そうとするようなものだ。

不眠症の原因が睡眠時無呼吸症候群である可能性もある。これは思考ではなく構造的な問題(多くの場合は喉の柔らかい組織が気道を狭くする)で、統計によれば多くの患者が、自分が同症候群であることを認識していない。アメリカ睡眠医学会の報告によれば、米国は現在、同症候群を患っている人は2,940万人にのぼる。

また忘れてはならないのは、不眠症の原因が自分の行動にあり、治療の必要がない可能性もあることだ。たとえば、夜遅くまでデジタル機器を使用していないだろうか。カフェインやアルコールを摂りすぎていないだろうか。こうした行動の全てが、よく眠れるかどうかに影響を及ぼし得る。オンラインCBT-Iにお金を払う前に、こうした行動を変える努力をしてみる価値はある。

オンラインCBT-Iに、不眠症の治療法としてのメリットがないとは限らない。今後より多くの人がCBT-Iを試していくなかで、今よりも質の高い研究が行われ、なんらかの評価が下されることを期待したい。

だが現時点では、健全な懐疑主義を適用すると、これもまた不眠症市場を狙った新たな商品であり、買い手責任負担の原則が当てはまるように思える。睡眠産業は年間100億ドル(約1兆200億円)近い一大ビジネスであり、不眠症患者は市場がなんとしても獲得したい“顧客”であることを忘れてはならない。

編集=森 美歩

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