チャイナ・レイバー・ウオッチは労働者へのインタビューと給与明細の調査から、中国本土で生産を行なう台湾企業のペガトロンで、「過剰かつ不法な」残業が常態化していることを発見した。3月には一人当たりの残業時間が最大109時間に達し、中国の法律がインターンの残業を禁じているにも関わらず、学生インターンも月に平均80時間の残業をしているという。
労働者は家族を養うために残業せざるを得ない。レポートによると、残業をしない場合、ペガトロンの従業員の月給は手取りで約213ドル(約2万2,000円)にしかならない。上海市政府は4月に最低賃金を月額304ドル(約3万1,000円)から330ドル(約3万4,000円)に引き上げた。ペガトロンの従業員も昇給したが、実際の手取りは減った。チャイナ・レイバー・ウオッチが調査した給与明細によると。ペガトロンは社会保険の支援も減らしているという。
利益減少のしわ寄せが労働者に
チャイナ・レイバー・ウオッチは報告書で、「労働者の待遇はひどいものだ。アップルの利益は減少しており、そのしわ寄せがサプライヤーに来ている。ペガトロンは影響を抑えるために労働者から搾取している」と批判した。
報告書によると、アップルは「ペガトロンのいくつか製造部門で、行き過ぎた残業が行なわれている」と認めたが、同社が確認した違法残業時間は、チャイナ・レイバー・ウオッチの統計より少なかったという。
報告書はティム・クックがCEOに就任後、毎年コストを5~10%カットしながら、サプライヤーに生産性の向上を要求していると指摘。アップルの利益が縮小する中で、負担はサプライヤーに押し付けられていると断言した。
アップルは劣悪な労働環境に対する指摘に、その都度反応してきた。ニューヨークタイムズが2012年に中国の工場の労働環境について報道した際、クックはその工場の従業員にメールを送り、「我々は世界のサプライチェーンの全ての労働者に配慮する」と述べた。そして2014年、英BBCがペガトロンの従業員の“虐待”について番組で報道した時は、当時のオペレーション部門の責任者で現COOのジェフ・ウィリアムズが、「私とクックは、結果としてアップルが労働者との約束を破って、消費者を欺いたことに非常に憤っている」と述べた。