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2016.08.30

ただの「パフォーマンス」? エピペン問題で渦中のマイランに批判続く

Photo by Joe Raedle / gettyimages

急性アレルギー反応の応急措置に使われる自己注射薬「エピペン(EpiPen)」の価格を400%つり上げたとして批判されている後発薬大手の米マイラン製薬は先ごろ、発行する割引カードの額面引き上げなどにより患者の自己負担を軽減する方針を打ち出した。

米国ではもう何年も前から、製薬会社が「患者の負担は増えていない」として、薬価の引き上げを行ってきた。そのためマイランが、一般的に医療保険が適用されているのだから問題はないと主張し、400%もの値上げを正当化しようとしても驚くにはあたらない。

ただ、一連の批判を受けてマイランは今後、新たに発行する割引カードによりエピペン2本セットの価格のうち、最大300ドルを値引き可能にするという。同社によれば、「これまでエピペンを定価で購入(全額を自己負担)してきた患者の一部は、半額で入手が可能になる」という。

問題のすり替えにすぎない?

しかし、患者の代わりにその分を負担することになる人たちが、この案に賛同することはなさそうだ。薬剤給付管理協会のマーク・メリット会長は、「マイランは単に、薬価設定の在り方の問題を医療保険の問題にすり替えようとしているだけだ」と述べ、「“おとり販売商法に倍賭け”して患者の自己負担分を相殺しようとする戦術は、ただ消費者や薬の購入者に請求書を突き付けるだけだ」と批判している。

一部の患者の自己負担分はマイランが肩代わりするかもしれないが、実際にはエピペンの価格の大半は、保険会社や雇用主、政府の保険プログラムが負担することになる。そして、その負担の増加分は保険料の上昇という形で、消費者に転嫁されることになるのだ。

また、米国の大企業が加盟する非営利組織、全米企業保健組合のブライアン・マーコット最高経営責任者(CEO)は、「エピペンは医療保険の対象だからといって、個人が値上がりによる痛みを感じない訳ではない」「値上がりは将来必ず、保険料の上昇として跳ね返ってくる」と述べている。

連邦議会上院では共和・民主両党の議員らがこの問題について、米食品医薬品局(FDA)に書簡を送付。「処方薬であるエピペンの値上げは、連邦税にも影響を及ぼす」との懸念を示した。さらに議員らは、「未成年者の40%が、低所得者向けの公的医療保険制度であるメディケイド、または児童医療保険プログラムに加入している。つまり、これらの子供たちに処方されるエピペンの代金を支払っているのは納税者だということだ」と訴えている。

編集 = 木内涼子

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