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2016.08.28

アップルCEO、就任から5年間の「成績」は? 記者が評価

ティム・クック (Photo by Michel Porro/Getty Images)


これらを踏まえた結果、株主への利益還元という点では、クックの成績はせいぜい「C」というところだろう。

人事

次に、もう一つのCEOの評価基準となる人事について考えてみる。一般的に、企業のCEOは誰でもその脇を固める幹部たちと、能力的には同程度の水準だと判断される。クックの就任時、アップル経営陣は良いチームを築いていた。そのチームがCEOとして招いたのがクックだった。そこで、この分野に関するクックの能力を評価するには、彼が誰を採用したかについて確認してみる必要がある。

真っ先に頭に浮かぶのは、クックがアップルに迎えた次の二人の名前だ──小売部門担当の上級副社長ジョン・ブロウェットと、バーバリーから引き抜いたアンジェラ・アーレンツだ。

ブロウェットはアップル株10万株を付与されて就任。だが、そのわずか6か月後に事実上更迭された。資産をおよそ6,000万ドル増やして同社を去ったことになる。バーバリーのCEOだったアーレンツも破格の年俸で同社に招かれたが、その彼女は今、どこにいるのだろうか?そして、就任からこれまでに、何をしてきたのだろうか?この項目については、クックの成績はよくても「D」だ。

運営管理

クックの就任からこの5年で、アップルの規模は2倍以上に拡大した。世界各地にいる従業員は約6万人だったが、現在ではそのおよそ倍。iPhoneの販売台数はジョブズが在任中の最後の四半期で約2,000万台だったが、最近の四半期ごとの販売台数は平均で約2倍。休暇シーズンには、およそ4倍を売っている。

これだけの規模を擁する企業にとっては、物流の管理は悪夢ともいえる。だが、クックはこの分野で非常にうまくやっている。物流に関しては、常に高い手腕を評価されてきたのだ。企業の運営管理という分野では、「A」の評価がふさわしいといえる。

企業買収

最後に、企業買収について考えてみよう。アップルは小規模な戦略的買収を行うことで知られてきた。クックCEOの下でこれまでに行った買収のうち、最大の規模となったのはヘッドホンメーカー「ビーツ(Beats)」と同社の音楽ストリーミングサービス事業の取得だ。

ほとんどの人たちが、アップルはこの買収に大金を使いすぎたと言うだろう。記者もまた、その考えに心から同意する。噂されている音楽ストリーミングサービス「タイダル(Tidal)」の買収では、同じ間違いをしてほしくないものだ。企業買収については、甘く評価しても「C」がいいところだろう。

総合評価

最終的にみたクックの5年間のリーダーシップに対する評価は、次のようにまとめることができる。

売上高と利益はどちらも増えている。だが、株価の値上がりはナスダック総合指数の上昇率さえ下回っており、株主への還元という点でみれば評価は低い。
総合的な評価は、よくても「Cマイナス」だ。

編集 = 木内涼子

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