リオの次は月だ! 世界月面探査レースに挑むHAKUTOの夢

ispaceの代表・袴田武史(photo by Ran Iwasawa)


「HAKUTOには『来る人拒まず、去る人拒まず』の精神がある。ボランティアの人たちに対しても『自分が情熱を持っているから関わっているんでしょ』というスタンスです。少し冷たい言い方かもしれませんが、好きなことを貫きたいのであれば責任感や厳しさが必要。実際メンバーたちにはそのようなスタンスで参加してもらっています」(袴田)

袴田がそう釘を指すのには理由がある。日本ではネガティブな印象が持たれやすいボランティアだが、世界的にその見方は徐々に変わってきているというのだ。

「これからの世の中は、いろんなバックグラウンドを持った人たちが、複数の仕事をする時代に入る。そういう社会では、ボランティアは『無償だけれども新たな機会が提供されるステップ』となる。実際にボランティアとして参加していた僕は、そのことを痛切に感じました。一方で、バックグラウンドが異なる人が、短い時間内でタスクを共同でこなすためには、非常に高いコミュニケーション能力も求められます。HAKUTOプロジェクトは、人類にとって未知なる挑戦。それを担うチームもまた新しい在り方を追求しています」(袴田)

白いウサギは何をめざすのか。袴田は未来を見据えたうえでこうも語る。

「HAKUTOプロジェクトの月面探査は、僕たちにとっては第一歩。その先にある月面資源開発、宇宙輸送プラットフォームづくりなど、『宇宙をビジネスにする』ことが最終目標です。各国の民間企業は、宇宙開発に対して積極的な動きを見せている。日本は一歩出遅れている状況です。僕らが掲げた最終的目標と領域には、まだまだプレイヤーがいない。そこにいち早く名乗りをあげ、この世界に必要な大きな産業の担い手になりたいと考えています」

HAKUTOは8月29日、資金や開発環境や素材などを提供するスポンサー企業も顔を揃え、キックオフ・ミーティングを行った。そこでは月面探査用ロボット(=ローバー)の最終版デザインも発表された。

その探査用ロボットの打ち上げは2017年に予定されている。ちなみにHAKUTOは、アメリカのチームであるアストロボティック・テクノロジー(Astrobotic Technology)の探査用ロボットとともに、米SpaceX社のロケット「Falcon 9」に“相乗り”する予定だ。

「探査レースの運営側は、今回の大会が人類初ということもあり、純粋な競争=コンペティションだけではなく、そこにコラボレーションを掛け合わせたもの、つまりコオペティション(Coopetition)だということを強調しています。年に1回参加しているサミットでも、各チームの代表が集まり、開発の進捗報告や情報交換などが行われています。とはいえ、やはりレースの側面も重要だと僕は考えています。正直、月面に到着さえできれば、日本チームが優勝できる可能性は高いと確信しています」(袴田)

リオデジャネイロのオリンピックでは多数の日本人アスリートたちが金メダルに輝いたが、HAKUTOも人類初の民間月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」では金メダルを狙う。

リオの次は月だ。

*Forbes JAPANは、来年の月面探査用ロボットの打ち上げまで、HAKUTOプロジェクトの動きを月一で追いかけていく。
au HAKUTO MOON CHALLENGE

文=河鐘基 編集=稲垣伸寿 写真=岩沢蘭

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