TOEIC満点記者が潜入取材! 英語学習の革命が起こるセブ島の今

写真=増谷康


「日本で英会話学校に通ったことがありますが、先生としゃべるだけみたいな感じで、そんなに一生懸命教えてくれなかった。でもここでは先生が非常に熱心で厳しく教えてくれる。宿題もいっぱい出るし、忘れると怒られるし、真剣なのが伝わってくるから、こちらも頑張らないといけないって思います」

フィリピン人の先生は総じて英語に堪能だが、個人差もあり、訛りがまったくないわけではない。それでも非ネイティブであることは逆に「強み」になる、と前出の藤岡氏は言う。

「僕はフィリピンの先生が世界で一番英語を教えるのがうまいと思っています。それは彼らがネイティブじゃないから。フィリピン人は母語が別にあって、小学校から英語を外国語として習い、話せるようになっています。だから彼らは英語の勉強が大変だということも知っているんです」

さらに文化的にフィリピン人が英語教師に向いている理由があるという。

「フィリピン人は世界で家政婦や看護師としてたくさん活躍しています。彼らは他人のために何かするのに長けているんです。なぜなら、多くのフィリピン人は大家族の中で生きているから。ここではきょうだいが5人、10人いるのは当たり前で、みんなで助け合って生きている。だからその助け合いの精神、つまりホスピタリティが世界一強いのがフィリピン人だと思っています」(藤岡氏)

授業や生活の質が向上したことで、意外な生徒がフィリピンに来るようになった。子どもたちだ。

セブ市内から車で1時間ほど離れた、マクタン島にある日系の語学学校「ファーストイングリッシュグローバルカレッジ」を訪ねた。代表の本多正治氏は日本で学習塾チェーンを経営し、そのノウハウを活かした丁寧な指導で評判だ。「親子留学」の受け入れ実績も多く、春や夏には小学生以上を対象にしたキッズキャンプも開催している。

取材時はまだ日本の夏休み前だったが、2組の親子(子どもは4〜6歳)が学んでいた。

フィリピンに子連れで留学することに不安はなかったのだろうか。母親のSさん(30代)は答える。

「フィリピンって治安とか水とか食事とかがちょっと危ないかなと思っていました。チビ2人を連れてくるのはかなり勇気がいりましたね。いざ来てみると、やはりここは途上国で、街の雰囲気も想像通り。買い物とかで外出するときは不安でいっぱいです。でも毎日いろんな発見があるので、そういうところを含めて、疲れるけど楽しいですね」

セブはフィリピンの中でも比較的治安は良いとされるが、日本のように公園で子どもを遊ばせるという文化はない。そのため、「子どもを遊ばせる場所があまりなくて困っています」と、別の母親は悩みを打ち明けた。

ハワイ留学のように、という感じにはいかない。

[後編は8/31公開]

文=増谷康

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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