ライフスタイルが変わった!トヨタ「未来プロジェクト室」が描く移動の未来図

コンパクトサイズの都市型モビリティ「TOYOTA i-ROAD」(photographs by Kenta Yoshizawa)


このような、未来に向けた新しい移動の価値を模索している未来プロジェクト室では、本社のエンジニアやデザイナーたちとチームを組んで複数のプロジェクトを同時進行させている。そんな同室が立ち上げたプロジェクトの一つがOPEN ROAD PROJECTだ。

この1年間の取り組みを通じ、試乗開始2週間でパイロット1人あたりの平均走行距離が30kmから300kmまで大幅に延びたという。ポイントは2つ。1つ目は駐車・充電サービス等が拡充し、利便性が大きく向上したことだ。

i-ROADのサイズ感を生かした新しい駐車サービス「Small Space Parking」では、店舗や住宅の軒先、駐車場の角といった、使われていない小さなスペースの活用を進めた。
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駐車サービス「Small Space Parking」

さらに、普通のコンセントで充電可能なi-ROADの特性を生かし、街中で使われていない掃除用のコンセントなどを契約し、充電ステーションとして活用するサービス「どこでもSTATION」も開始。ユーザーが手軽に充電状態やバッテリー残量を確認できるようにスマホ専用アプリも提供した。

大手企業とのコラボレーションも進む。大手総合デベロッパーとも連携し、商業施設でも充電施設付きi-ROAD専用駐車場を稼働させている。使われていなかった狭小スペースを有効活用した形だ。

移動をもっと楽しく、i-ROADをもっと自分らしく

走行距離が延びた2つ目のポイントは、移動の楽しさの再発見にある。

「移動に対して身構えなくなり、移動そのものが楽しくなる」
「乗らないとわからない、乗って楽しい」

そんな利用者の生の声は、i-ROADを体感してもらうための実証実験「試乗パイロットプログラム」を通じて集められた。今年7月までの約1年間、それぞれ約1カ月の搭乗を行ってきた様々な属性のパイロットの参加人数は、第8期までで総勢100名ほどとなった。

都市の移動は、人に見られる機会が多い。それならば、もっと自分らしくデザインを楽しめないかという想いから、3Dプリンターでオリジナルパーツを作れるサービス「ROAD KITCHEN」も生まれた。

他にも、走行データを音楽に変換するアプリ「SOUND-X」、回生ブレーキによる充電状況を見える化したアプリ「Streaming Blue」、車内を自分好みの空間にカスタマイズできる「Ex-Module」など、様々な取り組みが立ち上がった。

「スピード感を持ちながら、新しいアイデアで世の中を良くする、街を楽しくする、移動を楽しくするというビジョンを共有できる、様々な方々と新たな取り組みを一緒に進めていきたい」と、鈴木は語る。


鈴木雅穂◎トヨタ自動車コーポレート戦略部未来プロジェクト室室長。1988年トヨタ自動車入社、人材開発部に配属。91年調査部に異動。2004年商品企画部に異動。09年トヨタモーターヨーロッパに赴任。12年トヨタモーターヨーロッパから帰任、現職に着任。

文=土橋克寿

この記事は 「Forbes JAPAN No.18 2016年1月号(2015/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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