ビジネス

2016.08.24

8億人が使う中国WeChat コンビニ等でのビジネス活用も急拡大中

Freer / Shutterstock.com

中国企業の業務コミュニケーションの現場では、Slackなどのチャットツールではなく、中国最大のソーシャルメディアプラットフォームWeChatが利用されている。

テンセントが運営するWeChatはメッセージを送ったり、個人的なイベントについて投稿するだけでなく、タクシーを呼んだり映画のチケットを購入したり、ネット通販を楽しんだりできる。ユーザー数は8億人以上で、平均的な中国人が1日に10回はチェックするウェブサービスの集合体と言える。HSBCは2015年、WeChatの価値を香港で上場しているテンセントの時価総額のおよそ半分にあたる836億ドル(約8兆3,800億円)とした。

WeChatは個人ユーザー向けのサービスにとどまらず、ビジネス向けのサービスも増やしており、プライベートに加えてビジネスで利用する人も増えている。テンセントは8月17日、企業がオープンしたビジネス用アカウントを通じて2,000万人以上の会社員が休暇や経費の申請、プロジェクトの進捗管理などを行っていると発表した。ファイル転送やグループ通話などの標準的な機能に加え、企業のニーズに応じたサービスのカスタマイズも行なっている。

WeChatによるとコンビニチェーンのMeiyijia(美宜佳)は従業員が在庫を報告できる機能を追加し、北京理工大学は成績の確認や学費の支払いができる機能を追加した。さらに顧客にポイントを付与できるバーチャルポイントカードが発行できるサービスも提供している。

中国人はプライベートと仕事で同じアプリを使う

WeChatはこういった機能が普及する前から、100万人のユーザーがいるアリババのDingTalkなどのビジネス専用アプリよりも職場で利用されてきた。中国ではファイルを共有する際にはeメールよりもWeChatが好まれる。会議を行う際もスカイプよりもWeChatが使われる。ビジネスミーティングでは名刺ではなくWeChatのIDを交換する。

しかも、中国人はプライベートで利用するアプリとビジネスで利用するアプリが同じでも問題だとは感じないようだ。資産管理を専門とする28歳のMichael Zhangは、仕事中は顧客とやり取りを行うために常にWeChatを利用しているという。27歳のプロジェクトアシスタントMa WanzhiはWeChatで10の仕事関係のグループに入っており、1日2時間以上を費やすのと同時に、プライベートでも利用しているという。

「WeChatはとても便利なので仕事で頼り切っています」とMaは語る。「誰もがWeChatを利用しているので、新たなアプリが必要だとは思いません」

WeChatが中国のビジネスシーンで人気な理由は、中国人がビジネスを進めるにあたり昔から人間関係を重視しているからだとアナリストは分析する。欧米のテック企業の中国進出を支援するコンサルタント企業Alliance Development Group(安联思)でゼネラルマネージャーを務めるクリス・デアンジェリスは、本来プライベート向けのアプリであるWeChatでやり取りを行うことはビジネスで関係を構築する1つの手段だと説明する。

「中国では誰もがWeChatでプライベートを共有しており、投稿をフォローすることから始まる人間関係も多い。私たちはプロジェクトが走っているときは20のグループを立ち上げます。スカイプのようにパソコンを開く必要もありません」とデアンジェリスは言う。

しかし、北京のコンサルティング企業Analysys International(易观国际)でリサーチディレクターを務めるPang Yimingによると、他のビジネス向けサービスにも参入の余地はある。より良いセキュリティーや社内マネジメントを求める大企業はDingTalkのようなサービスを好み、中小企業はWeChatのサービスに満足している傾向があるのだという。

「中国のネットユーザーの90%以上がWeChatを利用しています。ほとんどの企業にとってはWeChatの無料のグループ通話で十分なのです」

編集=上田裕資

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