謎だらけの「北朝鮮版ネットフリックス」 政府制作コンテンツを放映

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北朝鮮国営テレビは、「ネットフリックス」のような国営の動画ストリーミングを展開する計画を発表した。ただし、インターネットにほとんど接続できない北朝鮮で、ストリーミングサービスが本当に実現するのかは不透明だ。

北朝鮮について報道する米国メディアNK Newsによると、北朝鮮では“Manbang”と呼ばれるセットトップボックスを使って番組をストリーミングできるという。国民は最大5つのメディアにアクセスが可能で、国営のドキュメンタリー放送を見たり、金正恩の動向を知ったり、政府系の労働新聞の記事を読むことができる。番組は完全な国営体制で、ネットフリックスやアマゾンプライムのようなサービスが入る余地はない。

北朝鮮が提供するストリーミングのテクノロジーが、インターネットテレビなのかビデオ・オン・デマンドなのかも不明だ。北朝鮮はインターネットへの接続が厳しく制限されている。今や途上国や新興国では携帯電話がインターネット接続の主要手段で、アフリカのコンゴでも59%が携帯電話を保有している。しかし、世界銀行によると北朝鮮の人口2,520万人のうち、携帯電話を持っているのは12%の300万人に過ぎない。

アムネスティ・インターナショナルによると北朝鮮では、許可されていない携帯電話で海外のインターネットにアクセスしようとすれば、収容所に送られる恐れがある。北朝鮮には、携帯電話の不法使用を探知する専門部署まであるという。

北朝鮮では、携帯電話だけでなくデスクトップからのインターネット接続も難しい。カリフォルニア大学バークレー校の政治学の教授で北朝鮮の専門家、スティーブン・ウェーバーは「イランと北朝鮮は自前のインターネット構築を望んでいるが、そうすると国民はグローバルインターネットに接続する方法を見つけ出すかもしれず、現実的には難しい」と指摘する。アムネスティによると北朝鮮のインターネットは、メールと国内のわずかなウェブサイトにアクセスできるのみだという。

ウェーバー教授は北朝鮮のストリーミングサービス開始には懐疑的だ。「北朝鮮は自分でコンテンツを作り、インターネットから分離されたエアギャップネットワークで配信できるかもしれないが、中国ですらそこまでする余裕はない。そして、北朝鮮がつくるコンテンツを見たいという人がどれほどいるのだろうか」と教授は述べている。

編集=上田裕資

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