テクノロジー

2016.08.25 07:00

対アマゾンで苦戦の米家電販売老舗、ベストバイの必死の生き残り策

Asif Islam / Shutterstock.com

Asif Islam / Shutterstock.com

店舗数が1,000店を超える米国最大の家電量販チェーン、ベストバイは1966年にミネソタ州セントポールで誕生した。当時はラジオシャックが家電量業界の最大手で、Hi-Fiオーディオが人気製品だった。それから半世紀が経ち、業界の勢力図は大きく変貌を遂げた。ベストバイは8月18日に創業50周年記念セールを大々的に実施した。

かつて栄華を誇ったリアル店舗型の家電量販チェーンの多くは、アマゾンの台頭により経営が大きく傾き、大手のサーキットシティが経営破綻に追い込まれた。ベストバイも苦境に立たされているが、何とか持ちこたえているのが実情だ。

同社が生き残っている理由は二つある。一つ目は他社に先駆けて携帯キャリアと提携して店舗内で携帯電話や関連サービスの販売を行ったことだ。もう一つは、PC修理サービスの「ギィーク・スクワッド(Geek Squad)」を買収し、ITリテラシーが低い層向けにPCの修理で収益を上げていることだ。

創業50周年を迎え、ベストバイはアマゾンに対抗して自社サイトの顧客に当日配送の提供を開始した。ウォルマートとアマゾンがEコマースの領域で熾烈な競争を繰り広げる中、ベストバイはこれら2社に太刀打ちできるのか。調査会社eMarketerによると、Eコマースの市場規模が最も大きい分野はPCと家電製品であり、ベストバイが生き残る余地はあるのかもしれない。

人間味あふれる接客でアマゾンと勝負

また、ベストバイにはアマゾンやウォルマートにはない、「人間味あふれる」サービスという武器がある。例えば、ベストバイの店舗に入ると、真っ先に黄色いシャツを着た店員に迎えられる。彼らの多くは元警官で、店舗を出る際にレシートを見て商品を盗んでいないかチェックをするのが仕事だ。また、ベストバイではウォルマートのように店員からぞんざいに扱われることはない。青いシャツを着た店員たちが何人も寄ってきて、薄っぺらな商品知識で丁寧に説明してくれるのだ。

しかし、50周年記念セール開催中の50時間はいつものような接客対応ができないだろう。これはブラックフライデーやアマゾンのプライムデーに匹敵する規模のセールになる予定で、普段はベストバイに寄り付かない人々も、この時ばかりはセール用に陳列された売れ残り製品を目がけて殺到するだろう。目玉商品は、2011年から棚に並んでいそうなアップルのマックブック プロや、在庫が1台しかないサムスンの65インチ4Kテレビだ。オンラインで購入する場合には、送料無料で翌々日に配送してくれる。

筆者はかつてのCD全盛時代、アマゾンがまだ存在していなかった頃にベストバイによく通っていた。当時はラップトップPCが登場したばかりで、購入する前に店舗にいって試すのが当たり前だった。しかし、今や他のネットショップの方が価格が格段に安いため、ベストバイを利用する機会はめっきり減ってしまった。筆者と同じように実物を試さずにネットで購入する人が多数を占める一方で、店舗で試したいと考える人も少なくない。ベストバイを支えているは、まさにこうした人々だ。

サーキットシティは破綻し、ラジオシャックも死に体となっている。リアル店舗ではウォルマートが、オンラインではアマゾンが圧倒的な勝者として君臨する中、果たしてベストバイは次の50年間を生き残ることができるだろうか。

編集=上田裕資

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