だが新たに登場した無線自動識別(RFID)タグが、この状況を変える可能性がある。
イギリスを拠点とする企業、アドバンスト・イーテキスタイルズ(Advanced E-Textiles)は、糸状のRFIDタグを開発した。このタグは洗濯が可能で糸の繊維の中に電子バーコードが埋め込まれており、無線で読み取りが可能なもの。製造の段階で衣料品に縫い込まれることになる。購入した消費者には検知することのできない、極小タグだ。
「現在のRFIDタグは製造が難しく、生地に織り込むのも難しい。かさばるし、耐水洗性や耐久性を保証できないからだ」と、アドバンスト・イーテキスタイルズのアヌーラ・ラスナヤキ創業者兼CEOは言う。
ラスナヤキによれば、検知不能な糸状のRFIDタグを使えば、衣料品のライフサイクルを追跡し、どのような繊維が使われているのか、どこで購入され、何年経過したものかなどの情報を入手することができる。
顧客が着古した衣料品をブランドの小売店に戻せば、リサイクルが可能だ。古い糸を紡ぎ直して新しいRFIDタグをつくり、新しい製品に縫い込むことができ、これが生産コストや廃棄物の削減につながる。
また自分の持っている衣料品が盗品か偽物ではないかと心配な人は、それをブランドの店舗に持って行ってスキャンしてもらい、履歴を確認することができる。RFIDタグが検知されなければ、偽物と推定される。
万引きや貨物の窃盗によって衣料品を手に入れた者は、タグを見つけるために品物を解体しなければならず、窃盗はかえってコストがかかることになる。
調査会社フォレスターの小売担当アナリスト、スチャリタ・マルプルは、ザラやコールズ、メイシーズなどの企業が既により優れたRFID技術に投資を行っているため、この新技術が今後、量販店で導入される可能性があると考えている。