ビジネス

2016.08.30

日本企業は“インドの変化”を直接見てほしい

インドソフトウェア・サービス協会(NASSCOM)会長のR・チャンドラシェーカー / photograph by Rema Chaudhary

インドソフトウェア・サービス協会(NASSCOM)会長のR・チャンドラシェーカーが語る日本への期待。

インドのスタートアップにおけるエポックメイキングな出来事は、ユニコーンが数社台頭したことでしょう。エコシステム全体にとって、若い起業家の活躍と国内デジタル市場の盛り上がりは目覚ましいものでした。例えば、Paytmは2年を掛けずに1億人のカスタマーを獲得しています。

IT産業全体も、右肩上がりの成長を続けています。多国籍企業の研究開発を担うグローバル・インハウス・センター(GICs)がインド国内に1,000以上あるのは象徴的で、そこで働くインド人は75万人に達します。こういった状況下で、NASSCOMは大企業とスタートアッフの連携促進、IoT分野における中核的研究拠点(COE)の実現、インキュヘーション施設の運営などを実施してきました。また約2,000社の加盟企業の代表として、国際的な交流も積極的に行っています。IT産業の成長に役立つことはすべてやっていくという方針です。

インド政府による推進策の成果もあり、投資家・大企業・スタートアップの連携が進み、また行政サービスが電子化されたことで需要サイドも盛り上がっています。その結果、インド人の生活はテクノロジーによって劇的に変化しています。eコマースは今、田舎にまで浸透し始めています。

その一方で課題もあります。例えば、IT産業BPOサービスの売り上げの大半が欧米企業によるもので、我々のIT輸出額の80%以上を占めている状況です。この偏った構成リスクを解消するために、インドのIT企業と共に、NASSCOMとしても日本市場に注力してきました。

しかし、我々のIT輸出額において、日本向けは2%以下に留まっているのが現状です。アメリカに継ぐIT市場である日本は魅力的なのですが、その開拓の難しさを痛感しています。というのも、日本においては、現場と本社との間に大きなギャップが存在しているように思えるのです。

日本企業の多くが躊躇しがちなのは、インドに対する理解が不十分さゆえでしょう。IT産業に牽引される形で、インド全体が活気づいています。イノベーションが加速し、洗練された都市化が進んでいる今のインドを、日本国内で舵取りしながら理解するのは難しいでしょう。ですから、ぜひインドをもっと訪れてほしいのです。

文=土橋克寿

この記事は 「Forbes JAPAN No.25 2016年8月号(2016/06/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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