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2016.08.24 10:00

ライブ会場マッチングサイト「FanFlex」が描く音楽ビジネスの未来

Goran Djukanovic / shutterstock

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近年はCDが売れないと言われるなか、音楽業界ではライブビジネスの活況が伝えられている。しかし、スタジアムなどの大規模会場を埋める有名アーティストらに比べ、小規模なライブハウスを活動の場とする無名アーティストらはその恩恵を受けられないのが現状だ。そこで登場したのが、「FanFlex」というサービス。
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FanFlexは共同創業者のエリック・ネルソン曰く「アーティストとファンを適正サイズのライブ会場につなぐ」プラットフォームだ。レストラン予約サービスの「オープンテーブル」とクラウドファンディングサイト「キックスターター」を足したような仕組みになっており、出演契約前に集客を確保することで、アーティストとライブ会場の双方の赤字リスクを回避するのが狙いだ。

加盟するライブ会場はまずFanFlexにログインし、スケジュールの空き状況、求める音楽のジャンル、希望のアーティスト人数、開催に必要なチケット枚数などを投稿する。そこにアーティストがアプローチし、会場から出演者候補として選ばれ次第“Flexチケット”と呼ばれる前売り券をFanFlex上でファンに直接発売する。

この時点ではまだライブの開催は確定していない。会場が設定する期日までに前述の枚数が売れて初めて決定する(ファンは仮購入時にクレジット番号を入力するが、開催が確定するまで決済されない)。売れなかった場合は白紙になり、会場は損失を被ることはない。反対に予想以上に売れ、早い段階で会場のキャパシティを超えた場合は、アーティストの収益を最大限にするためにFanFlexが別の広い会場を提案する。
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「古い業界の仕組み」を根本から変える

約1年前にスタートしたばかりのFanFlexはまだシステムの試行錯誤を繰り返している最中だが、拠点とする南カルフォルニアでは既に40のライブ会場、約300組のアーティストが加盟。これまでに売れた“Flexチケット”は600枚を超える。Flexチケットはファンの意思表明と言えるものだが、驚くべきことに表明後に実際に支払わなかったファンはたったの3名だ。

Fanflexの調べによると、音楽ファンの多くは目当てのアーティストがライブを行う際、会場よりもエリアを重視する傾向があり、自分が足を運べる範囲内であれば、会場にはあまりこだわらないという。これはアーティストにとって選択肢が増えることを意味する。

現時点で加盟している会場の多くはバーやレストランで、純粋なライブハウスとは異なりチケット売上がなくても経営が成り立つ。だが、今後はクラブやコンサートホールなどの音楽施設の開拓に力を入れるとネルソンは言う。その後、サンフランシスコ、テキサス州オースティン、テネシー州ナッシュビルといった他の都市にも進出するつもりだ。

従来、ライブ会場のブッキング担当者は経験値や好み、人間関係などをベースにラインナップを決めてきた。この古い慣習のせいで、会場がガラガラになったり、収支がマイナスになったり、知名度の低い新人アーティストが演奏の機会を与えられないといったさまざまな悪しき事態が起きていた。FanFlexはそれらの事態を回避するとともに、決定に携わる人々のプレッシャーを軽減する革新的なプラットフォームと言える。

編集=海田恭子

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