テクノロジー

2016.08.20 17:00

エイズ感染を防ぐウェアラブルな「膣リング」 アフリカ女性向けに開発

Gam1983 / shutterstock.com

HIV感染率が最も高い南部アフリカの若い女性を対象にした「抗HIV膣内リング」の臨床試験で、感染率を低下させる成果が得られた。この革新的な製品は、エイズ拡大防止の取り組みの“救世主”になるかもしれない。

1か月間効果が持続する膣内リングを開発したのは、非営利団体International Partnership for Microbicides (IPM)。同製品を継続的に使えば、HIVの感染を相当程度食い止められることが確認された。医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された発表によると、フェーズ3の臨床試験で、ダビピリンという抗HIVウイルス薬を放出する小型の膣内リングを装着した女性の感染防止率は70%に達した。

ダビピリン調剤リングの有効性を確認するプロジェクトは、2012年から2015年にかけて、マラウイ、南アフリカ、ウガンダ、ジンバブエなど15か所で18歳から45歳までの健康な女性を対象に実施された。ダビピリンリングを使った被験者のHIV感染リスクは、プラセボ薬(偽薬)を処方されたグループよりも56%以上低くなり、感染防止率は最大75%まで高まった。

アフリカ南部で、エイズは若い女性の主要な死因で、毎日1,000人以上がHIVに感染している。IPM創設者のゼダ・ローゼンバーグは、「アフリカでは、女性が性行為をコントロールできない」と説明する。女性たちは性に関する決定権を持たず、日常的に性暴力にさらされているほか、男性にコンドームの使用を頼むのが難しい状況だ。男尊女卑が浸透しているアフリカ南部で、抗HIVリングは女性が自分の健康をコントロールするための助けになるかもしれない。

膣リングの開発と普及を10年続けてきたローゼンバーグは、南アフリカのダーバンで先月開かれた国際エイズ会議で、大規模な臨床試験が成功したことを報告し、2018年までにリングの使用の認可を得る目標を明らかにした。IPMは3か月効果が持続するリングや、避妊機能も持つリングの実用化も計画している。

編集=上田裕資

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