谷本:それは一般入試でなく、推薦などで大学に入ってきているということも関係しているかもしれません。
西村:いずれにせよ、これが日本の技術者の学力だとすれば、製品開発力はどうなんだ、ということになります。アジアなど、他国の企業に買収されるのも当たり前ですよね。つまり、やったこと、勉強の評価をきちんとしないということが、こういう結果をもたらすのだということなんです。
谷本:そういう事情もあって、西村先生は「経済学検定試験」を作られたのですか?
西村:そうです。自分たちで何をやるか、何ができるかとなったときに、できることは経済学の分野でやろうと。経済学を学んでいる学生が、きちんと自分たちの学力を確認でき、それを他の人に見せられるような客観的かつ統一されたテストがあれば、学生にとっても目標になるし、大学へも、企業へ行くのにも役立つと思ったのです。
そこで、2001年にみなで協力して作り上げたのが「経済学検定試験」です。いまや、色々な大学で使っていただいて、外国人学生も受けるようになり、非常に良い成績もおさめています。経済学生の目標にもなりますし、社会においても、経済学の素養というものが、仕事を評価していく上で実際に役に立つと思います。
谷本:沢山の教育分野がある中で、経済への学びが日本の豊かさにつながるのですね。
西村:一番重要なのは考え方なんです。経済学を学ぶということは、結局は自分たち、さらには自分の子供たちの世代が豊かになることにつながるわけです。そのために知らなくてはいけない、知っている方が有利になるような分野であると信じているので、これを広めていく必要があると考えています。
西村和雄◎京都大学名誉教授、神戸大学社会システムイノベーションセンター特命教授。1946年、札幌生まれ。東京大学卒、ロチェスター大学Ph.D。日本、カナダ、アメリカの大学で教鞭をとった後に、1987年より京都大学経済研究所教授。2006年より同研究所所長。2010年より京都大学名誉教授・京都大学経済研究所特任教授。2013年より神戸大学経済経営研究所特命教授。2012年紫綬褒章、学士院会員。