2008年のいわゆる「リーマンショック」以降、世界経済は非伝統的な金融政策が取られる予測不可能な次元に入った。こうした「ニューノーマル(新しい常態)」な世界を生き抜くために、最高経営責任者(CEO)に必要な思考や資質とは?そして、どのようなリーダーシップが求められているのだろうか?
ここでは、世界的コンサルティングファーム「PwC(プライスウォーターハウスクーパース)」の協力のもと、世界の経営者たちの思考を紐解いていく。今年で19回目となる「世界CEO意識調査」では、日本のCEO126人を含む世界83カ国から1,409人のCEOにインタビューを実施(15年9月28日〜12月28日)。
彼らの回答から、今後の世界経済の見通しや、今後成長する上で重要だと考えるマーケット、特に重視しているステークホルダーなどが見えてくるはずだ。
1. 成長の見通し
Q. 今後12ヶ月に自社の売り上げおよび世界経済成長の改善見通しについてどれくらいの自信を持っていますか?
混迷する世界経済にCEOたちが感じる「一寸先は闇」
世界経済や自社の成長について見通しが立たないー。多くのCEOがそう回答した背景には、一昨年から続く原油価格の下落やユーロ圏の債務危機、中国経済の減速、中東や東欧における地政学上のリスクの増大のほか、AI(人工知能)をはじめとする新しいテクノロジーの台頭、シェアエコノミーなどのライフスタイルの変化がある。また、調査期間後に生じた「ブレグジット(英国のEU離脱)」も世界経済に大きな影響を与える可能性が高い。
そうした状況を受けて、「世界経済が改善する」と答えた世界のCEOは27%と、前年の調査よりも10ポイント減っている。日本のCEOも同様に前回の22%から14%までに下がっている。
「私たちは、それが経済的リーダーシップであれ、新興国・先進国の抱える課題であれ、あるいは政情不安や世界中に広がる過激主義的な物の見方が引き起こす問題、または新たな技術やビジネスモデルであれ、凄まじい速度で環境が変化する世界に生きていると言えないだろうか。それが「ニューノーマル」と呼ばれる概念である。このニューノーマルをリードする企業や国家は、常に変化する環境に対処するとともに、それらの変化に加速度的なペースで順応していくことができなければならない」(ジョン・チェンバース/シスコシステム会長)