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世界37カ国、700万人が愛読する経済誌の日本版

協和発酵キリン代表取締役社長 花井陳雄(photograph by Jan Buus)

がんの免疫療法に用いられる新薬が登場するなど、医薬品が技術革新のスピードをあげている。一方で、世界的に懸念されているのが、新薬のコストが医療費をパンクさせるという問題だ。医薬品業界は、科学の進歩、医の倫理、そして経済性という3つのファクターが拮抗する時代に突入したといえるだろう。

協和発酵キリン社長の花井陳雄も、30年の苦節の末、血液がんに有効性を発揮する抗体医薬品「ポテリジオ」を生み出した研究者だった。抗体医薬品とは生物免疫システムの構成要素である抗体を主成分とした薬で、がん細胞など特定の標的にだけ作用するため、周囲の細胞にも影響を与える通常の化学合成の薬と違って副作用が少ないという優位点がある。今でこそ注目されている抗体医薬だが、登場した1970〜80年代は、臨床試験の結果、人では効果が見られず、その後、多くの企業が投資を断念した。

「新薬になるかどうかを見極めるのは、運もあるため、目利きにも難しい。しかし、私は研究者だったので、臨床成績を解析して、確信したんです。もう一段、技術革新が起きれば”夢の新薬”が生まれる可能性があると」

しかし、花井が研究に没頭した日々を続けたかというと、実はそうではない。彼は夢の新薬のプロデューサーに”転身”したのだ。

「映画をつくるプロデューサーに似ています。私自身が試験管を振るわけではなく、それぞれ得意分野をもった若い研究者たちに任せて、どの大学の先生と組むのが適切かを考える。そして、私は会社を口説いたり、水面下で根回しをしたりしながら、開発費を捻出する(笑)。すると、映画プロデューサーのようにある段階から、『これはいい作品になりそうだ』と見えてくるのです」

では、画期的な技術をどうやってビジネス化するか。花井がとった行動は大胆だった。バイオ医薬の本場であるアメリカに渡り、2003年、ベンチャー企業である「BioWa,Inc.」を設立。開発した特殊な抗体作成技術(体内に入った異物を攻撃して排除することができる免疫細胞の活性を100倍以上高めることができるポテリジェント技術)の権利をBioWaに譲渡させ、導出活動を開始した。この発想は日本的な「子会社」の発想からかけ離れたものだったため、社内で猛反発を食らった。

飯塚真紀子=文

 

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