約5,000億円ー。2016 年4月26日、目を疑うような巨額の資金調達案件が話題となった。その主役は、中国のアリババ・グループが設立した金融サービスの専門会社アント・フィナンシャル。同社の決済サービス「アリペイ(支付宝)」は4億人に使われ、短期資金ファンド「Yuebao(余額宝)」も2 億6,000 万人が投資している。アリババといえば、15 年11月の「独身の日」のセールにおいて、1 兆5,000億円もの売り上げが一日で生まれたことがニュースとなったが、この売り上げはアリペイを介して支払われたものでもある。
中国で続いているFintechの躍進
アント・フィナンシャルは、アリババ・グループの存在感を“テコ”に、この巨額の資金を中国内外のさまざまな金融ベンチャーやインフラに投資していく見込みだ。上流から下流までを押さえにいく同社の戦略はFintechにおいては王道的な戦略といえる。特に、アリババ・グループが東南アジア最大のECサービスLazada(ラザダ)社に巨額の投資を行い、支配権を得るなど、アジア全体への影響力を強めつつある中で、インフラにも手が届くことのインパクトは計り知れない。
中国ではFintech 企業の躍進が続いている。例えば、テンセント社が運営するメッセンジャーアプリ「ウィーチャット(微信)」は、決済手段として「ウィーチャット・ペイメント(微信支付)」を提供し、少額決済の手段として急速に利用度を伸ばしている。今年の旧正月には80 億通もの「紅包(お年玉に相当)」が送金された。こちらも、メッセンジャーアプリという強力なソフトに、決済インフラビジネスが付随してきた形となる。
これらメガベンチャー以外にも、中国では巨額の資金調達が進んでいる。個人同士がお金を貸し合うことができる「Lu.com」や、ECサイト「JD.com」の金融関連ビジネスは、今年に入ってからそれぞれ1,000 億円を超える資金調達を実施した。その結果、今年第1四半期における世界のFintech資金調達ランキングでトップ5 社のうち3 社を中国勢が占めた。
まだほとんどのサービスが今後普及を遂げていくべき段階にある日本のFintechプレーヤーや金融機関などの当局すべてが、このような中国のスピード感を参考とすべきではないだろうか。