中国のマクロの動きの指標としてメディアが最も一般的に使うのは、前の年から経済がどれくらい成長したかをパーセントで示すGDP成長率だ。その測定法はたしかに中国経済で何が起きているかを把握するのに役立つが、あまりにも過大評価されている。Matthews Asiaの投資ストラテジスト、アンディ・ロスマンはGDP成長率を「一番どうでもいい中国の統計」とまで言う。
中国のGDP成長率はこの数年下がり続けているが、測定の基準となる母数は年々大きくなっている。だから2016年にGDP成長率を1%増やすためには、2015年の1%以上の生産をしなければいけない。そして10~15年前の1%を、今の1%と比べることはできない。
ロスマンの言い分はこうだ。
「ベース効果について言及する必要がある。GDP成長率が6.7%だった2016年と10.1%だった5年前の経済規模の拡大幅はほぼ同じだ。つまり、今年は経済が減速したと言われるが、中国に物やサービスを売る機会の大きさは、5年前と何ら変わっていない」
中欧国際工商学院のリチャード・ブルベイカーも同様の見方をする。
「6%半ばと聞くと減速したと感じるかもしれないが、経済規模は15年前の倍になっている。経済成長のスピードは前と同じで、ただ母数が大きくなっただけだ」
2006年、中国の名目GDPは2兆7,000億ドル(約274兆円)だった。10年後の今年は11兆ドル(約1,120兆円)に増えた。実に10年で800兆円以上の成長だ。中国経済の1年間の拡大規模は、スウェーデン一国の経済を上回る。
中国はGDP成長率目標の最低ラインを6.7%に設定しているが、世界で2番目に大きい経済体の6.7%というのは、とてつもなく大きい数字だ。