ビジネス

2016.08.19

名古屋大発のスタートアップが「40年ぶりの革新」を興す

Photo by Toru Hiraiwa

鈴木孝征、西谷智博が2015年7月に設立したPhoto electron Soulは、名古屋大学発スタートアップだ。電子ビームや半導体に強みをもつ名古屋大学の研究成果をベースに、電子顕微鏡や金属3Dプリンターに使う電子ビーム発生装置を開発。馴染みは薄いが世界を下支えする”技術”に革新をもたらし、計測機器や工作機器などの共同開発を行う。

伊藤毅が社長を務めるBeyond Next Venturesは16年、1億円の投資を行い、事業展開を支援している。伊藤は前職ジャフコ時代、CYBERDYNE、Spiberなどへの投資を手掛け、社外取締役として支援した経験を持つ。

伊藤:出会いは、15年。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のテクノロジー・コマーシャライゼーション・プログラム(TCP)という技術を基にした起業家支援プログラムのピッチイベントでした。もう少し詳しく技術的な話も伺いたいといろいろ話を聞くうちに「面白い」と。投資をした理由のひとつは、技術はもちろんですが、二人のチームです。西谷さんは20年ほど、コア技術の研究をし、「開発した技術を社会に役立てたい」という価値観を持つ研究者。私がこれまで支援してきた技術系起業家と共通した想いがありました。また、鈴木さんも名古屋大学産学官連携推進本部で大学発の技術移転をサポートしてきており、技術の事業化を担えるリーダーシップを持った人物であると思いました。

さらに二人とも、起業経験はないものの、起業家としての重要な資質である「柔軟性」がありました。成功に至るまで、熱意を持ち続け、計画や方法を考えて、試行錯誤しながらやっていけるチームだと実感したことも大きいです。

西谷:大学院時代からずっと同じ研究テーマで研究しています。大学院卒業後、日本原子力研究開発機構、理化学研究所の博士研究員を経て、いよいよ技術が”成熟した”というタイミングで名古屋大学に着任。特に起業は考えていませんでしたが、鈴木さんと3年ぐらい技術の実用化に取り組む中で、徐々に考え方も変わっていきました。TCPに参加したのも、鈴木さんの誘いがあったからです。
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構成=山本智之

この記事は 「Forbes JAPAN No.25 2016年8月号(2016/06/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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