傘立てに時計、そしてコピー機……。これらに共通する問題は、いずれも“共有スペース”で放置されている点である。
「会社が片付いていなくても、自分には関係ない」と平気でいられるのは、会社に貢献したい意識が低いからだ。これは、社員の「当事者意識の欠如」の表れでもある。同時に、うるさい管理部長や経営者がいないことを意味する。こうした会社はコンプライアンス(法令順守)の点で大失態を演じるかもしれない。
「神は細部に宿る」というが、会社の本質も傘立てのような些細なところに表れる。ほかにも、すれ違う社員から挨拶がなければ会社全体に覇気がなく、過労気味なのかもと推測できるだろう。受付嬢が極端に美人である場合は女性を容姿で判断する会社なのかも……という風に、小さいところにこそ本質が隠れている。
もちろん、これらの「法則」は万能ではない。この世に完璧な人がいないのと同様に、これらの条件に一つも当てはまらない会社はむしろ少ない。とはいえ、気になる兆候がいくつも重なると疑わしくなってくる。
例えば、訪問先の会社で社員とすれ違ったときに挨拶をしても覇気のない返事しかもらえなかったり、挨拶をしても無視されたりすることがある。それが1人2人なら問題ない。しかし、もし会う人すべてがそのようなときは……? 会社の業績が悪いから社員に覇気がないことも考えられるが、社員に覇気がないからこそ業績が悪い可能性だってある。
投資家の力量は、目に映る小さな事柄をつなぎあわせ、想像力をたくましくして、本質を探ることに尽きる。何となく違和感を覚えたことに対して、その理由を考えるクセをつけるのが大事である。会社の本質は必ず業績に、そしていずれは株価に影響してくるものなのだ。
先日も、神戸製鋼所のグループ会社が家電のバネに使う鋼線の強度試験の値を改ざんしていた事実が発覚した。いまや、東芝や三菱自動車などの大企業が不正を働く時代である。今後、コンプライアンスが厳しく問われ、不正が白日の下にさらされる流れは続くだろう。経営者は世知辛い世の中になったと嘆くのではなく、新時代に適応しなければいけない。社員も法令遵守を意識する必要がでてきた。
投資家も目に見える数字を追いかけるだけでなく、些細な事柄にも注意を払って企業の本質を探っていく必要がある。それに、こうした意識を持てば、仕入先を見極めたり、顧客の動向を見極めたりするときにも使える。必ずや、ビジネスパーソンにも役立つはずだ。