今春、銀座の中心地にグランドオープンしたメゾンは、このハイジュエラーのクリエイティビティを世界に向けて発信する旗艦店のひとつとして位置づけられた。ジュアン・マンク・エージェンシーとのコラボレーションによって紡ぎ出された幻想的なエクステリアと、ナチュラルなインテリアが絶妙に調和し、メゾンは独自性を保ちながらもさまざまな表情を魅せる。
エレガント、フェミニン、ポエティック、そして温かさ……。この多様性が訪れる人々に高揚感を与えてくれるのだ。
国際的なラグジュアリービジネスの経験が豊富なアルバン・ベロワーは、新たなメゾンが果たすべき役割を次のように述べる。
「日本人は自然の美しさを、儚さや脆さといった言葉で形容します。一瞬の美しさを大切に心へ残す感性を持ち合わせているのです。これは私たちのコンセプトとも共鳴します。自然というのは、私たちがインスピレーションを受けるなかで最も本質的な要素だからです。日本のメゾンから、人と作品が出会って生まれるストーリーに、世界が共感すると信じています」
人は、感情を喚起するものに心を奪われる。マンドール(黄金の手)と呼ばれる、ごくわずかな職人の卓越した技術によって創り出される、ヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーは、時に優美に、時に繊細に、時に静穏に輝く。このメゾンの価値を際立たせているのは、作品を生み出すために一切の妥協がないことだ。
「誰もが賞賛する作品が生まれると、それを維持していこうと考えるのが普通なのかもしれません。さらにデザインに磨きをかけ、品質の改善を目指すのは簡単ではありません。それにチャレンジするのが私たちのアイデンティティであり、哲学なのです」
一世紀以上にわたって築いてきた歴史を継承し、その一方で、比類なき作品を発表するためにイノベーションを起こす使命を背負う。しかし、ベロワーに気負いや重圧は感じられず、終始、柔らかい面持ちを崩さない。
「私にとって必要なのは、正直であり続けること。ヴァン クリーフ&アーペルがどのようなメゾンなのか、いま、何をしなければならないのか。お客さまに対して真摯に接すること、信頼関係を築くために夢を語ること、ジュエリーへの知見と作品が完成するまでの過程を論理的に説明すること、それらすべてに正直でなければ、人の心を揺さぶる作品は創れないのです」