2015年の収入は8億ドル。69歳となった現在でも、睡眠時間はわずか5時間ー。新規顧客の開拓や既存投資家との会合、諸外国の元首や高官との意見交換を行うため、様々な場所を飛び回っている。だが、毎週月曜日に行われるブラックストーンの定例会議への出席は欠かしたことがない。
そんなシュワルツマンは1947年フィラデルフィア生まれ。10代の頃に父親の経営する日用雑貨店を全国展開するべきだと働きかけた経験を持つ。イェール大学卒業後、キャリアのスタートは投資銀行のドナルドソン・ラフキン&ジェンレッドだった。
その後、72年にハーバード・ビジネススクールでMBAを取得すると、オファーを受けてリーマン・ブラザーズに入社。31歳でマネージング・ディレクターに選ばれる。
リーマン時代にシュワルツマンの後ろ盾となり、まるで親子のような関係だった、20歳以上も年の離れたピート・ピーターソンとタッグを組み、85年にブラックストーン・グループを創業した。ニクソン政権で商務長官を務めた経験があり、リーマンの副社長だったピーターソンは数多くの知人がいる一方、物事を分析的に見るシュワルツマンは交渉をまとめる能力に長けていた。
2人は口を揃えて「完璧」と自負する事業計画を作り上げ、実行に移していった。シュワルツマンの性格を一言で表現すると、慎重な性格で損失という失敗を極度に嫌う人物だ。
■スティーブン・シュワルツマンの名言
「私は失敗が嫌いです。そして損失を出すことは失敗に他ならない」
ブラックストーン初のLBOを、買収先の経営を完全に支配するのではなく、リスクを避け、利益より安全を優先した経営権を分け合う合併方法で実施した時を振り返って。
「どうしてよいかわからない時は、どうにかして意思決定を先延ばしにできるようにする」
ブラックストーン・グループの新入社員に向けて毎年述べる教訓。そして、シュワルツマンは「判断する前にもっと情報が必要だと主張してみるのです」とその極意を伝えるという。
「1985年の創業以来、絶えず新しい事業を生み出そうとしている」
リーマン・ブラザーズ時代にどんな商品やアイデアも5年以内にライバルに追いつかれると学んだシュワルツマンは、世界最大の投資ファンド運用会社になったいまも、新分野の開拓を続けている。
「ここで求められるのは満点の回答だけだ」
こちらもブラックストーン・グループ新入社員に向けた言葉。シュワルツマンの言葉の真意は「決断を下す前に、どうにかして少しでも十分に検討できるように取り組むこと」。失敗が嫌いという哲学が出ている。
「賢明であれ。創造力を発揮せよ。だが、何よりも損をするな」
たとえどんなに自社が有利な状況におかれても、ジュワルツマンから現場部隊へ指示は明確だ。新規事業を生み出しながら、失敗が嫌いー。この相反する思考を実現させる凄みをこの言葉は表している。