加熱する中国IT企業の対米投資 ベイエリアに累計60億ドルの中国マネー流入

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中国のIT企業の動向が、アメリカの大手新聞の目立つ位置に掲載されるのは、彼らの勢いがいよいよメインストリームを巻き込みつつあることの証拠と言える。8月2日、米ニューヨーク・タイムズ(NYT)は「モバイルの最先端はシリコンバレーではなく中国」との記事を掲載した。「ウィーチャットとアリペイが中国で配車や出前サービスを拡大し、動画サイトのYYからはスターも誕生している」といった内容だった。

これまでの中国の得意分野は全てグーグルやアマゾン、YouTubeの真似だと認識されており、中国の起業家に対する評価は低かった。しかし、中国のテック業界は今やフェイスブックやツイッターの先を行っているとNYTの記事は指摘した。

筆者が2008年に著書「シリコン・ドラゴン(Silicon Dragon)」を出版した際には、サブタイトルの「テクノロジーレースで勝つ中国」は言い過ぎのように聞こえたかもしれない。

しかし、今や中国には巨大なモバイルおよびインターネットの市場があり、優秀なエンジニアや海外で経験を積んだ帰国者もいる。現地のベンチャーキャピタルらも後押しし、中国版シリコンバレーを作り出したとまで言える状況になった。

先日は中国最大の配車サービス、ディディ・チューシン(滴滴出行)がウーバーの中国事業を350億ドル(約3兆5,800億円)で買収したのを筆頭に、中国の大手IT企業、バイドゥ、アリババ、テンセント(合わせてBATと呼ばれている)はアメリカのテック系企業に投資を行っている。ここ2年では、テンセントによるライオット・ゲームズの完全子会社化やバイドゥの金融スタートアップZestFinanceへの出資、テンセントとアリババが投資しているディディによる配車サービスアプリのリフトへの出資などがある。

ベイエリアに累計60億ドルの中国マネーが投下

さらに、アリババは拡張現実企業Magic Leapが7億9,300万ドル(約812億円)を調達した投資ラウンドを主導し、バイドゥはウーバーが12億ドル(約1,230億円)を調達した投資ラウンドを主導した。

アメリカのテック系企業も中国の資金を獲得することに躍起で、その額はサンフランシスコのベイエリアで近年60億ドル(約6,140億円)にも上っている。一部からは米国のVCよりも、中国の機関投資家の方が高く評価してくれるという声もあがっている。

中国のテック界の発展は米国のVCらの投資が後押ししてきた。アメリカのVCが最初に中国に足を運んだのは2000年。すぐに大手のセコイアやクライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ、ドレイパー・ネクサス、NEA、DCMが現地に支店を設けた。

近年になって投資はますます中国に集まっている。ナスダックやNYSEではなく中国での上場を狙うスタートアップが増えるにつれ、投資のリターンも増えている。中国のテック企業の快進撃は続いている。アメリカのスタートアップ企業の勢いに対抗できるのは、海外では中国企業以外にないだろう。

編集=上田裕資

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