今年4月に北京でファッションブランドPom&Coを創業した20歳のシー・ミンユー(石榴)もその一人だ。Pom&Coは日常着としてのチャイナドレスや花柄の洋服、クッションなどをデザイン・販売するスタートアップ。販売開始から5日間で200以上の注文を受けた同社は、中国の学生スタートアップの平均資金調達額である約50万元(約751万円)を大きく上回る200万元(約3,005万円)を調達しており、ブームの中で一歩抜きん出た存在だ。
起業のアイデアは、シーがアメリカの名門ブラウン大学で美術史を学んでいた大学2年生の時にさかのぼる。彼女はパフォーミングアーティストとして、365日チャイナドレスを着続けるプロジェクトを敢行し、世界30都市を旅して回った。そしてプロジェクト終了後に本を出版。同書の中で「チャイナドレスが素晴らしいのは、特別な場であなたを綺麗に見せるからではない。むしろジャスミン茶の香りとともに、日常の生活を美しく彩る点である」と述べている。
米ブラウン大学を中退し起業
現代の中国人女性は、改まった席やパーティー以外でチャイナドレスを着ることは滅多にない。選択肢も少なく、庶民には手が届かない高級品と劣悪なデザインの安物の両極に分かれている。そこでシーは、職場や家庭で着られるチャイナドレスを普及させたいと考え、ブラウン大学を中退してロンドンのセントラル・セント・マーチンズで1学期間学び、帰国。2か月後に故郷の北京でPom&Coを立ち上げた。
Pom&Coのチャイナドレスや洋服はミドルからアッパーミドル層の女性をターゲットにしており、価格は50〜130ドル。WeChatやStyleWe等のECサイトで取り扱われている他、近日中に中国最大のネット通販サイト、タオバオ(淘宝)に公式ショップがオープン予定だ。
シーは自身と中国の他の学生起業家たちの違いは「自分の弱点を知っていること。そして私が苦手な分野に長けた人たちと組んでいること」だと言う。Pom&Coのオペレーション部門ディレクターで、元ネット通販大手JD.com(京東商城)のアナリストのヨー・ユーは、「確かにシーは日常業務には向いていない」と認めながらもこう付け加える。
「シーにはブラウン大学を辞める勇気がある。現時点で私たちが何よりも必要としているのはブランドの象徴となるキャラクター。それを体現できるのはシーだけです」