新たに設立される持ち株会社の名称は「長江存儲科技(Yangtze River Storage Technology)」で、資本金は189億元(約2,800億円)になる。中国は国家政策として半導体産業の強化に取り組んでおり、今回の業界再編も中国政府主導で行われた。新会社の設立は、半導体の自給率向上に向けた大きな一歩になると見られている。
ガートナーの上海事務所のロジャー・ションによると、中国の半導体企業同士の買収としては今回が初めてのケースで、長江存儲科技には清華紫光集団の投資部門とXMCのエンジニアチームが統合されるという。
中国は半導体を年間約2,000億ドル(約20兆4,000億円)輸入しており、新華社通信によると半導体分野では世界最大の貿易赤字国だという。長江存儲科技の設立は長期的に国益に適うが、短期的には中国国内の中小半導体メーカーの経営にマイナス影響を与えるだろうとションは分析する。
「一番影響を受けるのはメモリ事業に投資を検討している中国企業だ。中国政府は長江存儲科技に手厚いサポートを提供しており、他の企業や地方政府は長江存儲科技ほどの出資を得ることができない」とションは話す。
2018年には3Dメモリの量産開始
ションによると、長江存儲科技は商業生産までに少なくとも2、3年を要し、清華紫光集団が最先端の3次元NANDフラッシュメモリやDRAMの生産工場を持ったメーカーを買収しない限りは、海外メーカーにとっては直ちに脅威になるわけではないという。しかし、XMCは年末までに3次元NANDフラッシュメモリの試作に成功し、2018年上期には量産が可能になるとHISテクノロジーで中国半導体市場担当のシニアアナリストを務めるフェイ・ホーは話す。
「中国で量産体制が整い、安価なメモリを大量に供給するようになれば、世界のメーカーは大きな打撃を受けて、中国メーカーが世界市場を制覇する可能性がある」とガートナーのションは言う。
影響を受けるメーカーは、韓国のSKハイニックスや日本の東芝(東芝はサンディスクと共同でフラッシュメモリを生産している)、アメリカのマイクロンテクノロジー(清華紫光集団は230億ドルでマイクロンの買収を試みたが、安全保障リスクを理由に頓挫した)、インテルなどだ。HISのホーによると、インテルは大連にある工場で先月より3次元NANDフラッシュメモリの製造を開始したという。
サムスンは先週行った2Q決算発表の中で、半導体事業が来年の利益を牽引するとしているが、今回の中国での業界再編の影響を受けることは必至だ。
現状、XMCは中国で唯一3次元NANDフラッシュメモリ技術の開発を行っている企業だ。ホーは、同社が2020年までに製品を市場に投入し、2030年までには世界トップクラスの半導体企業になると予測する。
新設された長江存儲科技は、投資能力と技術者チームを併せ持つことになるが、ガートナーのションは「大きな課題は、海外の主要なメモリメーカーが持つ技術の入手が困難なことだ。買収やライセンス契約によって海外の技術が獲得できるまで、中国政府は国内の半導体技術の育成に注力したい考えだ」と話す。