ビジネス

2016.08.09

元モルガン・スタンレーの秘密兵器、「規格外ファンド」の全貌

ピーターミュラーとPDTパートナーズの社員たち(photograph by David Yellen)


PDTの投資モデルの核は、マーケットに潜む小さな非効率を探し出す作業。ミュラーはこの投資モデルに絶大な信頼を寄せており、もしマーケットが想定外な展開を見せ、投資モデルの予測に反する事態が発生しても、人的な介入を行うことはほとんどない。

ミュラーが現在運営するヘッジファンドは2つだ。そのひとつ、「PDTパートナーズ」では、300億ドルを運用し15年の1月から11月までに、21.5%のリターンを生み出した。PDTの手数料率が高いことを考えると、グロスでのリターンは40%ほどと予想される。PDTは13年の立ち上げから、年換算純収益18.5%をたたき出している。

また既に長期間にわたっている運用しているもうひとつのファンド「Mosaic(モザイク)」は、150億ドルを運用し、同期間で手数料差し引き後10.5%のリターンを実現。ここ3年間の年換算純収益は8.5%となっている。

ちなみに、ミュラーが実現するこの高いリターン水準は”クオンツ投資の絶対王者”、ルネサンス・テクノロジーズに匹敵。ルネサンス・テクノロジーズの創業者のジェームス・シモンズは個人資産155億ドルの億万長者であるが、ミュラーを“新時代のシモンズ”と呼ぶ人さえいる。

ロボ・アドバイザー、インデックス投資ー現在のウォール街で成功しているのは、コンピューターを利用した理論や手法ばかりだ。しかし、これはクオンツ投資時代の序章にすぎない。

「クオンツを超える投資手法はありません。断言できます」

そう力強く話すミュラーは、優れた人材と高度な投資モデルを武器に、来るべき次の時代を迎え撃つ準備は万端だ。

■数字でみるPDT

45億ドル/ミュラーが経営するPDTパートナーズの運用額

21.5%/PDT最大ファンドの2015年1〜11月の手数料差し引き後のリターン

3%、50%/PDTの運用手数料と一部利益に対する成果報酬

18.5%/300億ドルを運用するPDTの2013年の立ち上げからの年換算純収益

8.5%/150億ドルを運用するMosaicの、ここ3年間の年換算純収益

3.5%/PDTの離職率

文=ナチャン・ヴァーディ

この記事は 「Forbes JAPAN No.25 2016年8月号(2016/06/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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