これはISP事業も行なう米大手ケーブル会社コムキャストが導入を計画しているサービスだ。広告主に閲覧情報を提供すればインターネット接続料が安くなるということは、裏を返せば自らのプライバシーを保護したければ追加料金を支払わなければならないということだ。米国の監督省庁である連邦通信委員会(FCC)は、これを認めない方針だ。
コムキャストはこの規制に不満を持っている。プロバイダーはあらゆる手段を講じて利益を上げるビジネスモデルで儲けており、プライバシーの保護を求める顧客から高い料金を取ることは当然だと考えているのだ。
コムキャストはFCCに提出した書類の中で、「情報を提供する代わりに割引を行うサービスはインターネットエコシステムを含むアメリカ経済において広く採用されているビジネスモデルであり、消費者保護やプライバシーに関する過去の判例や政策目標と矛盾していない」とした。さらにプライバシー保護のために追加料金を請求することを禁止すれば「より低価格なサービスを受ける機会を消費者から奪う」と主張している。
ISPは消費者を「搾取」している?
これは一部の利用者からは歓迎されるサービスかもしれない。コムキャストは料金を引き上げると言っているわけではなく、個人情報を提供してもらう代わりに料金を引き下げると言っているのだ。しかし、ここには論点も浮上している。プロバイダーらは、利用者がインターネットを使いたければプロバイダーと契約する以外に選択肢がないという独占的地位にあり、その地位を利用した消費者からの搾取だという見方だ。
消費者団体は顧客の閲覧情報をプロバイダーが収集・保存・収益化している方法に関して疑問があると訴えている。連邦法では広告に利用する目的でデータを収集・利用する場合には同意が必要だと定められているが、プロバイダーはデータの収集を拒否できるプランを提供しているだけで、厳密には同意を得ているわけではないというのだ。コムキャストと同様のサービスをすでに取り入れているAT&Tは、データの使い道を開示しデータの収集を拒否する方法も提供していると反論している。
消費者はインターネットを利用したければプロバイダーに頼るしかない。プロバイダーらは、今後も公益企業であることを否定し、あらゆる方法を駆使して顧客から金をむしり取っていくだろうという見方もある。