谷本有香(以下、谷本):「ラスベガス不動産王」と呼ばれるジアードさんですが、ご自身の投資ストラテジーは、ラスベガスだけでなく他の州や国にも応用できると思われますか?
フィリッペ・ジアード(以下、ジアード):はい、他の場所でも使えると思います。ポイントは2つあります。1つは「最悪のシナリオは何か?」を考えること。一般的に、投資家は利回りばかりを考えがちです。
もう1つは「出口戦略」を考えること。私にとってのゴールは、不動産を保有したまま含み益が上がっていくことではなく、転売してプロジェクトのリターンをしっかり回収すること。この2つが私の不動産投資戦略です。
我が社には10社以上の子会社があり、物件の修繕、物件の購入など各社それぞれに専門の役割を持たせ、不動産投資事業に必要な人材を全て自社で雇用しています。
そのため、市場が上がっているときは開発に注力し、下がっているときは最も安く物件を買い、修繕してスピーディーに売ることができるので、市場環境に関係なく利益を上げることができるんですね。
ラスベガスの不動産市場がユニークな点は、アップダウンが激しいにも関わらず、全米でもトップクラスの取引件数があることです。このことさえ理解していれば、市場が下がったからといって慌てることなく、下がっていても必ず収益を上げることができると理解し、投資し続けることができるでしょう。
谷本:今年、アメリカでは大統領選挙などいくつかのビッグイベントがありますが、不動産市場にどの程度影響するとお考えですか?
ジアード:大統領選によって金利が上がるなどの影響は考えられますが、定期預金の金利も日本と同程度の低さですし、さほど大きなインパクトはないと考えています。特にラスベガスに限っていえば、他の州に比べ失業率も低いですし、今後さらに雇用の増加が見込まれているので、悪影響はないでしょう。
私自身の投資でいうと、そもそも銀行から資金を借り入れることなく事業を展開しているため、金利倒れのリスクもありません。市場のアップダウンに関わらずリターンを得られるようコントロールしているので、大統領選や原油価格の低下など、外的なイベントには左右されません。