ハプティクス(haptics)と呼ばれる、ユーザーに振動を伝えるテクノロジーを応用したこのデバイスは、独自開発したハプティクス・エンジンLoSoundを搭載。ほとんどのヘッドフォンやオーディオジャックソケットに対応している。10~250ヘルツの低周波に反応して音楽と同期して振動し、周囲に迷惑をかけることなくライブの臨場感を味わえる。
腕に着けるだけでベースやパーカッションを体感できるBassletは、「以前は聞こえなかった重低音が体で楽しめる画期的製品だ」とロフェルトの共同創業者でCEOのダニエル・ビュットネル(Daniel Büttner)は語る。
プロDJもその凄さを実感
この製品は熱心な音楽ファンだけでなく、DJたちにとっても魅力的だ。SFX傘下のダンスミュージック専門オンラインストアBeatportの上級副社長Terry Weerashingeは、「DJはツアーでかける新曲を、以前はスタジオでヘッドフォンを使って確認するしかありませんでした。Bassletは手持ちのヘッドフォンにつないでアリーナでどのように聴こえるのか体感することができるのです」と説明する。
BassletはクラウドファンディングのKickstarterで3,720人から60万ユーロ(約6,800万円)近くの資金を調達した。これは当初の目標の11倍近い金額だ。ほかにもヨーロッパの革新的プロジェクトに資金を提供しているPro-FITや、香港の資産家である李嘉誠のホライズン・ベンチャーズなどから200万ユーロ(約2億2,600万円)を調達している。
Kickstarterでの調達資金は主に製造にあてられ、ベンチャーキャピタルから得た資金は研究開発に充てるという。2014年に創業のロフェルトは、音楽関連メーカーAbletonでプロダクトオーナーを務めていたビュットネルと、音楽ソフトウェア会社Native Instrumentsでプロダクトデザイナーを務めていたGwydion ap Dafydd(現ロフェルトCTO)が共同で立ち上げた。
Dafyddは両者とも「情熱的な音楽クリエーターの巨大なネットワークを誇って」おり、Native Instrumentsでの経験から「人々が真に欲しているものを商品化し、愛される製品を作り上げる」ことを学んだという。その経験をもとにサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)を含む大小さまざまなイベントに出品し、音楽見本市のMidemではハードウェア/IoT部門で大賞を受賞した。
BassletにはテレビやVRヘッドセットへの対応を求める声がユーザーから上がっている。それもそのはずで、この製品の魅力はゲームのように音楽を没入型に仕立て上げるポテンシャルにあり、LoSoundエンジンはVR企業や自動車メーカーらが既にテストを行っている。