ハイパーループ、ドイツ版は「VR車窓」つき バーチャルな景色を提供

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イーロン・マスクが提唱した次世代の高速輸送システム「ハイパーループ」。そのコンセプトを実現させようとしているスタートアップの一つが、ハイパーループ・トランスポテーション・テクノロジーズ(HTT)だ。同社は7月28日、ドイツ鉄道と提携してハイパーループ用の最先端テクノロジーを既存の車両に応用した「イノベーション・トレイン」の開発計画を発表した。

このイノベーション・トレインに搭載予定の技術の一つが、車窓の外の景色に重ねて様々な情報を映し出す「AR(拡張現実)車窓」や、窓のないハイパーループでも外の景色を見られる「バーチャル車窓」だ。HTTはこれらの技術を紹介するイメージ動画を公表した。このイノベーション・トレインの開発資金はドイツ鉄道が支出し、来年頭に予定されている試験走行に向けて現在は研究が行われている。

ドイツ鉄道の支援で実現へ

HTTはベンチャーキャピタルから大規模な出資を得るには至っておらず、現状は従業員の大半がストックオプションと引き換えに無償で働く「クラウドソース・モデル」によって事業を運営している。HTTのような企業にとって今回のような大企業とのパートナーシップは、革新的なテクノロジーを開発する上で、資金面でのメリットが非常に大きい。ドイツ鉄道にとっても、技術力のあるスタートアップとの提携は最先端テクノロジーに接する絶好の機会となり、相互にウィン・ウィンな関係を築くことが期待される。

「公共交通機関は採算が厳しく、政府からの補助金に依存していることが大きな課題だ。新しい技術やアイデアの導入で快適な乗車体験を提供できるだけでなく、ハイパーループのような革新的なビジネスモデルを構築して新たな収益を生み出し、採算性を向上させることができる」とHTTのディルク・アールボーンCEOは話す。

ドイツ鉄道が運営する地域鉄道ネットワークの一つであるSüdostbayernbahn (SOB)でマネージング・ディレクターを務めるクリストフ・クララーも、「新たなアイデアや革新的な技術のプロトタイプを一般の車両に応用することが可能になる」と述べ、HTTとのパートナーシップを歓迎する。

ハイパーループの実現を目指すスタートアップの中で、HTTにとって最大のライバルは「ハイパーループ・ワン」だ。ハイパーループ・ワンは7月27日、ラスベガスの工業用倉庫内に最初の工場をオープンさせた。また8月初めには、フィンランドのヘルシンキとスウェーデンのストックホルムを30分弱で結ぶ計画に関する実行可能性調査の結果を公表した。それによると、このプロジェクトに要する費用は、オーランド諸島の下を通る海底トンネルの建設費33億ドルを含めて、総額210億ドル(約2.1兆円)に達するという。

編集=上田裕資

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