河北省井陘(セイケイ)県では2日間の降水量が昨年1年間の雨量を上回った。近くのケイ台市も過去最悪の洪水に遭い、北京市と武漢市も相当な被害を受けた。水害の被害額は過去最大の447億ドル(約4兆2,500億円)に及ぶとチャイナ・デイリーは伝えている。
447億ドルは2008年の北京オリンピックの開催費に相当し、米ワールドトレードセンターを10棟建設できる額だ。ブルームバーグは、今年の洪水が中国の第3四半期のGDP成長率を0.2%押し下げると見込む。
中国の都市の排水管は、猛烈な雨を受け止めきれず、氾濫水は道路にあふれた。急速に進められた都市化が、被害を拡大したとの批判も多い。中国は35年ほどの間で、450都市をつくり、4万平方キロメートルを都市化した。その間に、高速鉄道網1万9,000キロ、29の地下鉄、高速道路6万キロ超、100か所近い新空港を建設した。
急激な都市化が洪水の原因
河川や池、湖といった自然水系管理システムは、舗装とコンクリートで窒息死してしまった。武漢では全体の3分の2に相当する87の湖が、1949年から2015年にかけて消失した。北京大学建築景観設計学院院長のユー・コンジエン(俞孔堅)は、都市化によって中国東部では過去30年で湿地の50%以上が消失し、洪水を抑制する能力が著しく落ちていると指摘する。
中国住宅都市農村建設部によると、中国の都市の約半分は国の洪水防止安全基準を満たしておらず、1時間あたりの排水能力は東京とニューヨークが50mmなのに対し、武漢市は34.5㎜、上海は36㎜しかない。ユー・コンジエンは都市の排水能力不足の理由を、自然に対する軽視、“無情”な都市化、市場の自由競争、国の腐敗が組み合わさった結果だと説明する。中国では排水設備のような都市インフラへの投資は置き去りにされてきた。
中国の2000年から2014年の水害被害額は3,000億ドル(約30兆円)に達していた。