採用面接のあり方を変える? 米で質問を制限する新法成立

マサチューセッツ州のチャーリー・ベーカー州知事(Photo by Paul Marotta / gettyimages)

マサチューセッツ州が米国で初めて、雇用主が就職志望者に対して過去の給与を尋ねることを禁じる法律を成立させた。同州のチャーリー・ベーカー知事が8月2日、新たな同一賃金法案に署名した。

多くの雇用主は、新規採用者の給与水準を、その人物の以前の給与水準を基に決めてきた。だがマサチューセッツ州の各企業の人事・採用担当者は今後、就職志望者の価値を評価する新たな方法を考案しなければならない。

同一あるいは似たような仕事をしても、女性は男性よりも賃金が安い場合がある。そのため、もしも雇用主が新規採用者の初任給を、前の仕事の給与水準に基づいて決めた場合、男女の賃金格差が拡大する可能性もある。

今回の法案成立は、「就職志望者の過去の給与水準は、新たな雇用主による評価にほとんど関係ない」と長年主張してきた筆者にとっては嬉しいニュースだ。

所定のポジションに関する初任給の基準が決まっていれば、新たな同一賃金法の導入にあたって困ることはないはずだ。しかし、初任給が決まっておらず、さまざまな基準によって賃金が変動する企業にとっては(私の経験では初任給がきちんと決められていることはほとんどない)、新たな法律は衝撃かもしれない。

マサチューセッツ州に限っての話だが、今後は「あなたは前職の給与が50,000ドルだったから、うちでは53,000ドル出そう」と言うことができなくなるのだ。

企業の給与等級は、各等級間の金額差が大きい場合も小さい場合もあり、そもそも全ての組織が給与等級制度を使用している訳でもない。経営者や人事担当者たちは今後、給与設定について迅速に学ぶ必要がある。

そうすることで、極めて有能で適任の人材がしかるべき報酬を受けていないケースや、そこまで能力や資質がない人材が、雇用主にもたらす価値以上の給与を稼いでいるケースがあることが分かるだろう。

能力重視の雇用主たちは以前から、新規採用者の給与について、前職の額を参考にするのではなく、その人物が今後果たす役割に基づいて金額を提示してきた。では、新規採用者が要求した以上の金額を支払ったこともあるのだろうか。
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編集=森 美歩

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